*情事後








「………んっ…」


腰が重くて動けずにいると、髪を撫でられた。


「…黒子っち、可愛い」

「………」


ちょっと待ってね、と言って、僕の身体を拭き始める。

手伝おうと手を伸ばしたけれど、彼の腕につかまるだけで終わってしまった。

けだるい空気が部屋を包む。



「黄瀬くん、もう大丈夫です。ありがとうございます」

「ほんと?痛いところない?」

「はい。大丈夫です」


…こうやって気が利くところも、女の子に人気のある理由の一つなんだろうな。

どうして僕なんだろう?あんなに好意を寄せられているのに、
考えながら綺麗な横顔を盗み見る。


「…女の子にも、同じように優しくしてあげるんでしょうか」

「ん?」

「あ」


しまった、口に出してしまっていた。


「、何でもないです」


慌てて布団を被る。
頭まで隠れてみたけれど、自分の顔の熱さが嫌というほど分かった。


「…俺、確かにフェミニストとか、よく言われるっスけど」



布団の上から優しく撫でられる。
布団越しに触れられた背中が熱い。


「でも、黒子っち一筋だから、優しくするのは最低限」

「…最低限って、何ですか」

「傷つけない程度、かな」


当たり前か、と笑う。


「こういうことはしないっスよ」

「…こういうことって、なんですか」

「ついさっき、黒子っちとしたこととか」


布団をめくろうとしたから、慌てて手で押さえた。
今どんな顔をしているのか分からないし、見られたくない。

黒子っち暑くないの?と、遠くで笑っているのが聞こえる。


…本当だろうか。

いつか簡単に突き放されてしまうんじゃないか、
時々、やり場のない焦燥感に駆られる。


「黒子っち、それって嫉妬?」

「…違います」


布団をずらして隙間から睨む。
いつの間にか目の前に黄瀬くんがいて、どきりとした。

すぐに布団の中に戻ろうとしたけれど、


「残念、俺には上目遣いにしか見えないっスよ」

「……んっ」


強い力で引き剥がされて、口付けられた。



「……どうしたの?」


薄く微笑んで頬を撫でられる。



「…………僕は」

「うん?」

「……僕は遊びですか」

「うぉっ…女の子みたいなことを言うんスね」

「………」


冗談めかして言うから少し腹が立って、背中を向けた。

本気なのに。



「嘘。…許して?」

「………」


腕の下から手を回されて、背中から抱き締められる。

お互いまだ少し熱を帯びた素肌が、触れ合ってじわりと汗ばむ。



「…黒子っちだけだから、安心して?」

「できません」

「どうしたら安心してくれる?」

「……………キス」



くすりと笑う声が背中越しに聞こえた。



「何回?」

「何回でも」

「キスだけ?」

「…だけじゃ、駄目です」


彼のほうに身体を向けて頬を寄せると、


「黒子っち」


より強く引き寄せられて、口付けられた。



「好き、大好き、…愛してる」


幸せすぎて、夢じゃないかと錯覚してしまうから、

示して欲しい、言葉で、仕草で、行動で、

24時間、君でいっぱいにして欲しい。



「……僕も」


僕もその度に、返すから。





















*******
愛される度に不安になる黒子と、その度に行動で示してあげる黄瀬だといい。

20120513

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