一緒に食べましょう。
部屋でくつろぎ始めて少しした頃、包みを手にしてそう言った。

そこまでは良かった。黒子っちが料理苦手なのは分かっていたし、買ってきたものでも全く構わなかった。
その次が問題だった。


「これ、火神くんに貰ったんです」

「…へー」


部活で配った残りなんですよ、そう言いながら差し出された包みはシンプルなもので。言われれば確かに手作りらしいと思える。


「ラッピングまで火神っちがしたの?意外とマメっスね、あの人」

「いえ。包んだのは僕です」

「え?」

「この間の日曜日、作るの手伝ったんですよ」


きっといつもの俺だったら一番に、黒子っち怪我はなかったっスか、とか、大慌てになるはずで。

だけど今日は、へえ、と答えるのが精一杯だった。
少しだけよれたリボンを指で遊ぶ。


「…黄瀬くん?」


日曜日。逢いたいと言ったら逢えないと返ってきた、それは用事だとか部活だとかたまにあることで。
だけど問題はそこじゃなくて。
『降旗くんの買い物に付き合うから』と、そう告げられた理由だった。


一言で言ってしまえばそれは嘘。

でも何より辛いのは嘘をつかれたことよりも、寂しいと思いながらひとりベッドで寝そべっていた時間に、その誰よりも逢いたかった相手は火神と一緒にいたということだった。

立てた片膝に顔を乗せて見えないように溜息をつく。認めたくない感情から少しでも逃れたかった。
視界に学生鞄と大きな紙袋が目に入った。朝も昼もひっきりなしに渡された数えきれないチョコの山。だけど数なんて関係ない。欲しいのはいつだって一つだけだ。


「黄瀬くん、」

「…何スか?」

「はい、これ」


背けた顔を動かさずに返事だけしていると。左腕に何かが当てられた。


「…え?」


先ほどの包みは床にあって、
それと全く同じ包みがもう一つ。


「2つくれるんスか?」

「いえ、」

途切れた言葉に顔を見ると、自分の手元を見つめたまま。



「…これは、火神くんに教えてもらって僕が作りました」


同じ分量のはずなのに火神くんのより固まるのが遅くて、なかなか固まらなくて。
そこまで言うと下を向いた。


「だから、まずかったらすみません」


俯くのは彼の癖だ。
だけど今は、心なしか顔を赤くして。


「黒子っち」

衝動という言葉が頭に浮かんだ時はもう、口付けた後だった。



「ありがとう、…食べていい?」

「…、どうぞ」


包みを開けるとトリュフが5つ。少しいびつな形をしているのはきっと、作ったのが彼だから。


「おいしい」

「…火神くんのレシピですから」

「もー、黒子っち」


頬に手をかけて上を向かせる。やっと目が合った。合った瞬間少し恥ずかしそうに逸らした目を、逸らさせまいと口付ける。


「っふ、……ん、」


舌を絡めるとさっきよりも甘い味が広がる。時折漏れる声と低い水音。


「甘いっスね」

「…当たり前、です」


息をつきながら答える。少しだけ紅潮した頬、唇のそばにチョコがついていた。舌で舐めとっても何も言わずに、こっちを見つめたまま。


「もっと食べたい?」

「っぁ、…ん……、ふ」


トリュフを口に入れて口付ける。押し込めたそれは互いの舌で転がって、熱で次第に溶けていく。


「っん……ぅ、…!」

シャツのボタンに手を掛けると一瞬戸惑いを見せて。けれど、手を滑り込ませて肌をなぞると制止しようとした腕はゆっくりと落ちた。

「っあ、…っや…ぁ」

乳首に舌を這わせると、次第に甘い声を上げて。空いていた手を下半身に伸ばして布越しに撫でると、硬さを帯びた彼のものが反応を見せる。

「っや、ぁっ…ぁ」

バランスを崩して後ろ手をついたその隙にデニムを下ろして、下着越しに刺激を与える。上下に摩りながら強弱をつけるようにいじると、じわ、と愛液が滲んで。下着ごと彼のものを口に含む。

「っぁ……んっ……」

吸うように舐めると、少しだけ苦い味がした。下着の中で徐々に張り詰めていく彼のもの。舌先で先端を突くと高い声を上げる。けれど達せないせいか、少しずつ腰が揺れ始めた。

「ね、黒子っち…イキたい?」

見上げると目が合って、小さく頷いた。下着を下ろして彼の性器に手をかけてゆっくりと上下させる。擦る度にぐちゅぐちゅと音が響く。

「っ…ぁ、ん、…っ」

腰が震え始めた瞬間、強く根元を握った。

「あっ…ぁ、なん、で…」

今にも達してしまいそうに、手の中で彼のものは震えて。けれど根元を押さえているから射精することは出来ない。



「イキたいって言わなくちゃ、イかせてあげない」


耳元で囁くと、根元を締め付けたまま空いた方の手でしごき出す。ぶるぶると身体が震えて、握った彼自身をさらに先走りが伝う。

「……イキたい、……っ」

「…よく言えました」


言うと同時に締め付けていた手を離す。

「っあぁ…っ」

その瞬間、待ちきれなかったかのように精が放たれた。
二、三度震えて精を放つと、荒く息をついて。



「こっちにも食べさせてあげるね」

両足を開くと、先ほどの包みからトリュフを一つ取り出して。先走りで濡れた後孔に押し当てる。指で押し込むと、ずちゅ、と小さく音を立てて飲み込まれていった。指を差し込んで掻き回す。

「っやぁぁっ…、んぁっ」

中で潰すように内壁を擦ると、熱で次第に溶け始める。奥を引っ掻くようにすると一際高い声が上がって。指にチョコが絡み付いてぐちゃぐちゃと音を立てる。指を引き抜くと甘い声が漏れた。


「ね、俺も黒子っち食べていい?」

軽く口付けると自分のものを取り出して、後孔に当てがう。


「っぁ……はやく、……っ」

待ちきれないみたいに腰を揺らし始めて。


「そう急かさないで」

そう言いながら一気に貫くと、


「あ、っ……!」

瞬間、腕を掴んでいた手に力が込められる。口付けるとそれは緩んで。ゆっくりと動き始めると、その腕は首に回された。

「っん、ぁ、ぁんっ…」


前立腺を擦るように打ち付けると、一際高いものになって。その一点を突くと、結合部がぐちゅぐちゅと音を立てた。


「っやぁ、も………だ、め、…っ」

突く速度を速めると、両足がぎゅう、と腰に絡められて。


「ゃっ…ぁ、…あぁぁっ……!」

しがみつきながら一際高い声を上げて、その締め付けに達して。互いの身体に精子が掛かるのが分かった。

やがて自身を引き抜くと、白濁と一緒に先ほど入れたチョコがどろりと流れた。













「…どうするんですか、これ…」


床はチョコまみれになっていた。


「ごめんね、俺が片付けるから……あ」

「どうしたんですか?」

持ち上げた袋の中には最後のトリュフが残っていた。


「黒子っち、一緒に食べよ?」

「…いいですよ」


覗き込むとうっすらと微笑む。

俺を嫉妬させるのが上手くて、それは彼の無意識で、
だけど誰よりも俺を喜ばせるのが上手くて、



「やっぱやめた。黒子っちから食べさせて」

「…君は子供ですか?」

「いいっスよ、してくれるなら子供でも」

「仕方ないですね…」




愛しい人が作ってくれた、

やっぱりそれは甘かった。
















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Happy Valentine!
20130215


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