!黄瀬+赤司×黒子(3P)
「おい、黄瀬」
「何スか?」
「勝負だ」
振り向きざまに突き付けられた突然の言葉に、即座に反応できる訳がなく。その意味を理解するための時間を与えてくれる訳もなく。
そして彼が真顔で紡ぎ出す掛け声を似つかわしくないと笑う余裕も、黄瀬にありはしなかった。
「俺の勝ちだな」
「…あの、赤司っち、何がしたいんスか…?」
企てなしに唐突にジャンケンなんて始める訳がない。その直感は、吊り上げられた口元を見た瞬間に確信に変わった。
「黄瀬。言うことを一つ聞け」
「っん、」
その声に隠れるか隠れないか、もう片方の手の中からは、ぐちゅ、と濁った音が響いた。自室の防音の壁を横目で見ながら心の中でひとり笑う。家人がいないことは分かっているはずなのに何を気にしているのか。いや、気にしていることは確かにあるのだけれど。
「っや、…駄目です、」
「なんで?」
その言葉が裏腹なことは知っている。ゆるゆると右手を動かすと黒子は甘ったるい声を上げる。それは誘っているようにしか聞こえなくて、黄瀬は小さく笑いながら口付けた。
「あっ、っぁ、も、…っ」
洋服を掴む手に力が入って、手の中で黒子自身が震え始めた瞬間。背後からドアの軋む音が響いた。
「やあ。黒子」
「赤司く、な、どうして、…」
慌てふためく黒子を横目に黄瀬は小さく溜息をついた。最悪のタイミングだ。いや、赤司にとっては絶好のタイミングか、そう思いながら。情事の最中に部活の仲間が入って来たという状況に、黒子は戸惑った様子で起き上がる。
「ああ、そのままでいいよ」
「…え?」
「『お願い』したんだ。混ぜて貰おうと思ってね」
混ぜるという言葉の意味を理解してか瞬間顔を染めた黒子に、赤司は平常のままといった様子で黒子の側に立った。
「も、もう帰りますから」
「へえ?こんな風になったままで?」
「…っえ、ぁ…!」
赤司の指が黒子のデニムの中に潜り込む。ちゅ、と小さな音がした。下着ごとずるりと下げられて露わになった黒子のものは先走りで濡れていて、先程と同じく勃ち上がったままだった。
「このまま帰るんじゃ辛いだろう?楽にしてあげようか」
「何言って、………っぁ!」
まるで口付けるように赤司は黒子のものを咥え込んだ。
情事に混ぜろ、それが赤司の唐突な要求だった。目の前には混乱したままに、チームメイトが自分自身を咥えるのを受け入れている恋人。僅かに抵抗を見せた腕は赤司の片手に掴まれてその意味を成さない。
「っや、赤司くん、何し、…っあ!」
「うん?」
ゆっくりと上下して、時折覗く舌が這い回る。達しかけていたからか、程なくして黒子の腰が揺れ始めた。
「っや、駄目です、出ちゃ…」
「…ん、」
「っぁ……あ…!」
赤司の髪を掴んだまま黒子が顔を背けて、瞬間腰が震えた。咥えたままごくりと上下する赤司の喉を見て、射精したのだと分かった。
「可愛いね、黒子」
「…な、ん、…っふ……」
顔を真っ赤に染める黒子の腰を引き寄せるとそのまま口付けて、赤司の指が滑り込んだ。後孔に宛てがわれた指が、くぷ、と小さく音を立てて飲み込まれていった。
「っひ…ぁ、ん…」
隙間にまた一本、数を増して、ゆっくりと抜き差しされるにつれて水音が響く。
「また勃ってるな」
「…っん、ちが…」
「入れるよ」
「えっ、待、…!」
勢いよく広げた脚の間に割り込んで腰を沈める。ぐぷ、と妙にやらしい音を立てて赤司のものが飲み込まれていった。
「っあ、ぁ…!」
「随分とほぐれてるんだね」
茶化すように笑う声に、黒子の頬が羞恥に朱く染まる。赤司が腰を動かし始めると次第に黒子の喉から甘い声が漏れ始めた。
「黄瀬に『お願い』したんだよ。聞いてる、黒子?」
「っあ、ん、あぁっ」
普段自分が見ているはずの、乱れて嬌声を上げる黒子が今は赤司に組み敷かれている。そう思うと見つめているだけでまた、萎えかけていた自身が硬くなるのを感じた。
「ぐちゃぐちゃだな」
「やっ、触っちゃ、ぁっ」
蜜を零し続ける黒子自身に手をかけると、その様子に赤司は満足げに微笑んだ。沿わせた手は腰の動きに合わせて黒子のものを擦って、ぐちゅぐちゅと濡れた水音が大きくなっていく。
「…っ黒子、イくよ」
「っあ、ん、…っ、」
「ちょっ、赤司っち、中出しは」
「そう言われても黒子が締め付けて離さないんだ、仕方ないだろ?」
声の冷静さとは裏腹に。話なんて耳に入らないのだろう、突き上げられながらひたすらに喘いでいる黒子を見ながら。止める言葉は二人に届かない。
「っや、ぁ、っあぁ…!」
「っく…」
押し込めるように注ぎ込むと、そのまま黒子を抱いて息をついて。ゆっくりと抜いたその後孔からは、どろりと白い液体が垂れた。
「…黒子っち」
「黄瀬く、……っん…、ふ」
上気させた頬を手を添えると、口付けてそのまま舌を絡めた。自分のものでいっぱいにしたい。あらゆるものを浸透させて。
ぐったりと力が入らない身体を抱き寄せる。勃ち上がった自身を当てがってゆっくりと腰を落とさせた。
「ん、…っあぁ…」
重力に従ってすんなりと中に潜り込む。中に溢れる体液が滑りを良くしていた。これは赤司のものだと思うと複雑で、けれど何度も達したせいで敏感になっているのか、少し動いただけで黒子は甘い声を漏らして、その度にきゅうきゅうと締め付ける。
「っや、あ、っぁん…っ」
突き上げながら胸の飾りをいじるとまた声が大きくなる。と、次の瞬間黒子は悲鳴にも似た声を上げた。
「気持ちいい、黒子?」
「っあ!ぁっ、ぁ、駄目っ…」
背後から周り込んだ赤司の手が黒子のものを上下に扱く。くちゃくちゃと水音が響いて、先走りが自身を伝って結合部を濡らしていた。いやいやをするように首を横に振る黒子の頬を涙が伝う。
「また、いっちゃ、…っ」
「イけばいいよ」
「っや、ぁ、ぁーっ…!」
声を上げながら跨がった太股に力が入って、次の瞬間黒子のものが精を吐き出した。荒く息をつく黒子の背中を黄瀬が撫でてやると首に回った腕に力が込められた。
「黒子、舐めて」
白濁で濡れた自身を指差しながら赤司が小さく笑う。先ほど欲を吐き出したばかりの赤司のものはまだ硬くなったままで、黒子は前屈みになってそれに舌を這わせた。
まだイッてないんだけど、と口にすれば睨みつけでもされそうで、黄瀬は黙ってその背後に回った。黒子の後孔は赤く充血していて、赤司が吐き出した白濁が溢れて垂れている。
「入れるよ、黒子っち」
「んっ…ん、ぅぅ…っ!」
黒子の腰を持ち上げるように掴むと、黄瀬は自分のものを当てがった。吸い付くように内壁が絡み付いて、ぐちゅぐちゅと音が立てながら飲み込まれていく。くぐもった声を上げながら黒子は赤司のものに舌を這わせる。
シーツはいつの間にかぐちゃぐちゃになっていた。精子と先走りが混ざって黒子のものを伝って垂れて、膝の冷たさを感じながら突き上げる。より深くまで押し込むと時折高く声を上げて、黒子は自分から腰を揺らし始めた。
「黒子、もっと舌使って」
「っん、ふ…っ」
「そう、いいね……イきそうだ、…っ」
「…む、ぅ…っ!」
瞬間勢いよく赤司のものが引き抜かれて、震えたそれは黒子の顔に向かって白濁を吐き出した。
「大丈夫、黒子っち、……っ!」
ゆっくりと振り返った黒子の顔を見て声が止まる。目が合った黒子の顔は白濁にまみれていて、頬を伝って口に垂れていた。
「…黒子、っち…」
「きせ、く…」
ごくりと唾を飲み込むのと、繋がったままの腰を引き寄せるのは同時だった。勢いよく引き抜くとひくつく後孔。ふらふらと倒れ込む身体を抱きしめて口付ける。
「ん、ふ、っぅん…!」
貪るように咥内を掻き回しながら抱いた身体を組み敷いて、高ぶってそそり立った自分のものを黒子の中に潜り込ませる。
「っあ、ぁ、ん……っ」
「黒子っち、…っ」
高ぶりに任せて突き上げる。動きに合わせて上がる甘い声。赤司にイかされてぐちゃぐちゃになった黒子はいやらしくて可愛くて、愛しくて堪らなくて。その全てが興奮材料になっていた。
だけど、黄瀬は心の中で呟いた。
俺の恋人だ、やっぱり俺が気持ちよくさせてあげたい。やっぱり最後は二人で一緒がいい。打ち付けながら舌を絡めると、応えるように黒子の両手が回された。
「っぁ!ん、あぁっ…!」
「好き、黒子っち、大好き、…っ」
「あ、ぁ、黄瀬くん、…黄瀬くんっ…!」
力いっぱいしがみついて、何度も名前を呼びながら黒子は精を吐き出した。抱きしめ返しながら瞬間、黄瀬もその締め付けに達した。
あれから半日。何度送受信を繰り返しても黒子からの返信はない。
本当に怒ったときは着信拒否をするのを知っているから、恐らく気恥ずかしさと気まずさが原因なのだろう。そう思いながら黄瀬は机に突っ伏して溜息をついた。
「随分と腑抜けた顔をしているな」
「誰のせいだと思ってるんスか…」
目の前で機嫌良く笑う元凶を横目で睨む。目が合った瞬間、隙間から見えた赤司は満足そうに笑った。
「なんだか最後は見せ付けられて終わったからな。不完全燃焼だ」
そう言いながらわざとらしくついた溜息が恐ろしい。声が笑ってる、いまだに鳴らない携帯を握りしめながら黄瀬は思った。
「黄瀬、また勝負するか?」
「二度としないっスよ!!」
そうだ、全てはあの勝負に負けたことから始まったのだ。こんなことになると予想もしていなかった半日前。思い出して、黄瀬はまたひとつ大きな溜息をついた。
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20130212