時計を仰ぎ見る。3時27分。

ねえ、したい、と口にして、昼間からふざけるな、と一蹴されたのが確か一時間ほど前。

ねえしよう、と言うのはやめて、口付けて押し倒したのが30分ほど前。明日は学校だろうがと押しのけながら抵抗されて。


そして今は、茶化すような言葉さえ彼には興奮材料になっているらしい。



「ね、したくないんじゃなかったっけ」

「っぁ、あ」

返事の代わりに喘ぎ声だけがただ漏れる。ぎゅ、とシーツを掴んで。その背中がいつもより小さく見えて、後ろから抱きしめる。熱い。握りしめた拳に自分の手を重ねて背中を啄みながら打ち付ける、赤い斑点、上がる声が嬉しくて。


「っぁ、ゃ、あぁ…!」

「…女の子より可愛い声出して」

「誰のせい、だと、…っぁ!」


後ろから手を滑らせて胸の飾りを触ると甘ったるい声が漏れる、突き上げながら彼のものに手をかけて扱くと声はさらに大きくなった。


「っぁ、黄瀬、」

「ん?」

「手、離し、…っ」

「んー、聞こえない」


途切れ途切れでかすれてうまく聞き取れないのは事実、ぐちゃぐちゃと濁った水音が響いているのも原因の一つ。

一瞬後ろを振り向いて睨みつけてきたけれど、それはねだっているようにしか見えなくて、最奥を突き上げると一際高い声を上げた。握りしめられたシーツはベッドから外れ掛かっている。


「っぁ、ぁ、あー…!」


瞬間、大きく身体が痙攣して、手の中で震えながら熱いものが吐き出された。溢れたものでぬめる手の平。指の隙間から零れて、はたはたと音を立てながらシーツに落ちた。


「…あれ、もうイっちゃったの?」

「…っるさ、…」


ぐったりとベッドに沈み込む上半身をねじらせて口付ける。手を拭かずに触れたから、彼の頬にべとりと精子が付いてしまった。不快感からか眉をひそめて。

上気した頬の白さと朱さに煽られて思わず口付ける。あ、と思ったときにはもう、自分の頬にも彼の精子が付いてしまっていた。お揃いっスね、と言って笑うと、ふざけるなと小さく呟いた。

繋がったまま仰向けにさせると彼のものから白濁が垂れ落ちた。零れる精子を指ですくいながら扱くとぬちゃぬちゃと音がする。


「っ、…触るな」

「いっぱい出たね」

「っやめ、ぁっ」


イったばかりの先端をいじると、触れる度に腰が跳ねる。敏感になっているようで。時折甘い声を漏らしながら目をぎゅっと瞑って。抵抗するのは口先だけで、身体は。


「…あー、足りない」

「え?……っぁ!っや、ぁっ」


腰を掴んで打ち付ける。ついさっき注ぎ込んだ自分のものと絡んでぐちゃぐちゃと音がする。突然のことに驚いたのかしがみついてきたから、喘ぎ声が耳元で響いて。


「なんでそんな可愛いの」

「っあ、ぁ、っ…!」


可愛い、なんて、普段言おうものなら顔をしかめて睨み付けてくるけれど。こうして目尻に涙を浮かべながら喘ぐ姿は、愛しい、可愛い、その言葉以外当て嵌まるものが見つからない。

柔らかくなっていた彼のものも、指を絡めると次第に硬さを帯びていく。口付けると舌が絡められた。


「っあ、またイっちゃ、っ…」

「いいよ」

「っぁ、あ、…っぁ…!」


震えながら二度目の精を吐き出して。
目を閉じたまま荒く息をつく彼に口付けると、うっすらと目を開けた。


「ねえ、俺まだイってないんだけど。寝ないでよ」

「……も、むり」

「だーめ」


頬をなぞるとその腕に手を絡ませて、溶けるような小さい声で何か呟くのが聞こえて、ゆっくり目を閉じて。そのままくたりと動かなくなった。

腰を動かしても声を上げずに。眠りに落ちた彼を突いていたらまるで犯しているみたいで、そう思ったら妙に高ぶって。彼の中で果てた、いつもは中に出すのを嫌がるけれど今日は何も言わなくて、眠っているから当然のこと。

自身を抜くと穴から精子が溢れて小さく水音が立った。真っ赤に充血した後孔から垂れた白濁が白い肌を滑っていく、色が妙に鮮やかで艶めかしくて。


寝顔を見ながら、やっぱり赤司っちの声を聞きながらイキたいなぁ、なんて思って、こんな気持ちにさせた彼の首筋に跡を残した。きっと目を覚ましたら怒るだろうと思いながら、でも怒った顔も好きだからわざと目立つ場所に色濃く残していると、ん、と言いながら身じろいで目を開けた。



「…黄瀬」

「あ、ごめん。起こした?」

「……起こしてない」

「暑いっスよね、今…」

「このままでいい」

離そうとした身体は彼から抱き着かれて張り付いた、互いの体液が交ざってべたつく感触。それでも不快感はない。少しして腕の中から小さく寝息が聞こえてきた。時計を見ると4時を過ぎている。


「…おやすみ」

囁いた声は彼の耳に届いたはずだけれど返事はない。小さく寝息をたてる彼の汗ばんだ額にキスを落とす。昂奮と少しの背徳感と、そして少しの寂しさを感じたことを、彼は知らない。


目が覚めたらシャワーを浴びて、ああ、その前にまずキスをして。考えながら目を閉じる。

起きたら彼からキスしてくれればいいのに。おはようと言って口付けるのはきっと俺からで、それでも起きがけは寝ぼけているから攻撃はされないだろう。こんなふうに自分から抱き着いて眠ったことも、目覚めた彼は恐らく覚えていない。まるで魔法が解けたみたいに元に戻っているだろうけど。

撥ねつける彼も、しがみついてくる彼も、想像してみても愛しさは変わらなくて、目を閉じたまま口元が緩んだ。


















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日常でふとした時に甘えたになる赤司だといいと思います。

20121021




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