懐かしいのは檸檬のお茶──そして、しあわせのうたを──

そして、しあわせのうたを


「……1杯のかけそばか?」
「失礼ね」
いつものカウンター越しの会話。
「かけそばよりも、何と言うか……」
「いい話でしょ?」
「つまり、侑は親が後で食べようととっておいたドーナツを勝手に持ち出して、友達みんなで食べて、予定通り怒られた訳だ」
「……何か違う」
私が嫌な顔をしても、目の前のひとには全く効果はなく。
……しかもちょっと笑ってるし。
悔しくてそっぽを向いたら、ついに吹き出した。
「何がおかしいのよ」
「……別に」
声を殺して。
身体を震わせて笑ってる。
他にお客はいないんだし、声を上げて笑えばいいのに。
「今日は、懐かしのレモンティーにするかな」
「リプトンのイエローラベルと液体レモンでね」
「レモンスライスじゃ駄目?」
「液体レモン。リプトンもうちにあるから大丈夫」
顔を見合わせて笑う。

あと10分で閉店。
そうしたら。
2人で過ごす幸せな休日が待っている。




(終わり)







[ 9/21 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -