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「弁当のおかずがなくなるぞ」
おかずは唐揚げだけじゃないからいいじゃない。
そう言ったが、あっさり却下された。
……ああ数日振りの動物性蛋白質。
ゆっくりとお弁当を味わい、タンブラーに手を伸ばした。
さっきまで冷蔵庫に入れていたタンブラーはよく冷えている。
「水出しだ。冷やすと美味しい」
そう言って、手渡されたタンブラーの中身は冷煎茶。
寝る前にポットに茶葉と水を入れて冷蔵庫に放置したものを、朝、タンブラーに入れたらしい。
……甘い。
口の中に緑茶の甘味が広がって行く。
紅茶の甘さとはまた違って。
水出しのすっきり感も相まって。
……緑茶も甘いんだね、リン。
農園ものの夏摘みダージリンみたいに、分かりやすい甘さじゃないけれど。
でも。
小さい頃から身体に馴染んだ煎茶の甘味は、さりげなくて、優しい。
口に含めば清々しい香りが鼻に抜ける。
……今晩《猫の杜》に行ったら、真っ先に空のお弁当箱とタンブラー見せようかしら。
そんな、子供のようなことを考えて、私は少し笑った。
こうして甘ったれの私は、どんどん駄目になっていく。
おかしいなあ。
前はこんなじゃなかった筈なのに。
そのうち、麟太郎がいないと生きていけない、とか言い出すんだろうか。
……まあ、いいや。
私は幸せな気分で目を閉じた。




(終わり)







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