2

あの2人の方を見ないようにして、仕事に励む。
そうしているうちに、また客が店に押しかけてきた。
客を捌くのに追われ、波が引いた頃には2人の姿は席にはなかった。



店を閉め、同僚と別れて歩き出すと。
「お疲れ〜」
「お勤めごくろ〜」
悪友2人が待ち構えていた。
狩野(かりの)と宮部(みやべ)。
学校でつるんでいる仲間が揃ってしまった。
「……何でクリスマス・イブの夜に野郎2人でつるんでるんだよ?」
寿がぼそっと呟くと、宮部が言った。
「日付変わったからもうイブじゃないだろ」
「どっちだって同じだろ」
寿は溜息をつく。
「しかも何で狩野がいんの?」
「佳乃(よしの)が熱出したんだよ」
彼女が病気では予定がパーになる訳だ。
こうなると、寿にはもはや家に帰るという選択肢はない。
「で、何処行く?」
「俺ん家」
「狩野ん家?」
「だって誰もいないからさ〜」
「嘘だろ……」
寿はこめかみに手をやった。
「もう電車もバスもないじゃん」
「歩けば1時間くらいで着くよ」
「職質受けるんじゃねーか?」
寿の言葉にも、目の前の悪友2人は笑っている。
ま、いいか。
寒いけれど。
こいつらがいるなら。
「しょーがねーなー」
寿は先頭切って歩き出す。
狩野と宮部も続いて歩く。
「ま、今日の一番の間抜けは狩野だよな。神谷(かみや)さんナイス発熱」
「うるせーな。宮部こそ、佐藤さんに相手にされてないくせに」
「しょうがねえだろ」
3人は、夜道をケラケラ笑いながら歩いてゆく。
歩いていればいつかは辿り着く。



今夜、母と再会したことも。
その後で仲間と一緒にいられることも。
もしかするとサンタクロースからのプレゼントなのかも知れない。

「ありがとう」

誰にともなく、寿は呟いた。
「何か言った〜?」
「何でもないっ」
泣きそうな気持ちを誤魔化すように大声で笑って。
寿は夜空を見上げた。


星が綺麗なクリスマスの夜。




(終わり)







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