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だから、矢口さんがあんなことを聞いてきたのか。
「矢口にも何か言われたんでしょ?」
「…別に」
「宮部が見てたんだよ。神谷さんが矢口達に呼び出されてるのを」
私は溜息をついて、口を開いた。
「大したことじゃないよ。狩野君と付き合ってるのかって聞かれただけ。だから付き合ってないって答えた」
「神谷さん、俺のこと嫌い?」
「…嫌いじゃ、ないけど」
「じゃあ、付き合ってくれない?」
「…お茶ならね」
嫌味のつもりで言ってみた。
「お茶でいい。でも、毎日お茶してくれない?」
「ま、毎日?!」
「何なら図書館に一緒に行くのでもいいけど」
「と、図書館?!」
絶句。
固まった私を見て、狩野君は笑って、ぐいっと私の腕を引っ張った。
「まずは今日の分のお茶ね。マックでいいよね」
「今日の分、って!」
何で狩野君は楽しそうなんだ?
私はほとんど引きずられるようにして歩いていた。
「何で引っ張るの?!」
「じゃないと逃げるでしょ…佳乃(よしの)は」
私は目を剥いた。
「俺は狩野君じゃなくて、雅明(まさあき)がいいなあ」
「――っ!」
何なんだ、この変貌振りは!
「佳乃、顔が赤いよ」
「かみ…!」
「雅明」
「ま、雅明…」
頭痛がしてきた。
明日から私はどう生きていけばいいんだ。
矢口さんには付き合ってないって言ったばかりなのに。
このことが学校で知られることになったら…。
「明日は一限からだよね。学校、一緒に行けるね」
「……」


こうして、私の平和な生活は終わりを告げた。
翌日から私が学校での人間関係に悩むことになったのは言うまでもない。


(終わり)





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