3

さっきの?
さっきのって?
……あ!
「ちょっと待って……っ」
私の返事も聞かずに狩野君は軽く音を立ててキスをした。
私の顔はみるみるうちに真っ赤になる。
「やっぱり佳乃は可愛いよね〜」
その言葉を聞いて思った。
私は狩野君の彼女かも知れないが。
やはり狩野君の玩具でもあるんじゃないだろうか、と。


翌日。
またいつものように私と狩野君は図書館にいた。
「……其処、違う」
またですか?
慌てて書いたものを見てみる。
「?」
どこで間違えているのかを懸命に考えていると、狩野君が言った。
「分かんなかったら苦しいやつ1回ね」
苦しいやつ?
苦しいやつって?
……あ!
「あれは嫌っ! 絶対見つけるっ!」
私が必死に見直しているのに、狩野君は笑っている。
「時間制限、設けようかなあ〜」
冗談じゃない。
やっと間違いを見つけて、書き直すと、私は何やら疲れて脱力した。
「あ〜あ、残念」
本当に残念そうに狩野君は言う。
「か――雅明、楽しそうね」
私がうんざりして言うと、狩野君がにっこり笑った。
「その、『か――』って言うのもペナルティーつけようかなあ」
「な、何でっ?!」
「俺のこと、名字で考えてるから、雅明って言う前に『か――』って出る訳でしょ」
……ばれてる。
「今度それ言ったら苦しいやつ1回ね」
「何でっ?!」
「俺は佳乃のこと神谷(かみや)なんて呼ばないもん。だから佳乃も、狩野、はナシだよ」
……だから何でペナルティー?
「最初から言ってんのに、一向に改善しないんだもんな〜。やっぱりペナルティーがないと駄目ってことだよね〜」
唖然。
何でこうなるのっ?
私が一体何をしたっ?!
「佳乃、また顔が信号機だよ」
分かってるけど、止められないのよ!
赤くなったり青くなったりするのは!
私は机に突っ伏し、狩野君はケラケラ笑っている。
それもこれも、学校の図書館に人が少ないのが悪い。
……早く後期の授業が始まって欲しい。
私は切に願っていたのだった。



(終わり)





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