空虚
空っぽの部屋を見回して、呟く。
「さよなら」
それは何に対して言ったものなのか。
自分でも分からなかった。
いつまでも、不安定な関係。
周りは皆、身をかためているというのに、彼とはずっと8年もこのままだった。
それが、本当に辛かった。
会えるのも最近は少なくなって、もう、自然消滅するのではないかと祐希奈(ゆきな)は思っていた。
やめよう。もう。
スマホを解約して、新規登録したのが、昨日。
どうせ、会社とわずかな友人に教えれば問題ない。
そして、今日は引っ越しの日だ。
空っぽの部屋を見回して、呟く。
「もう、終わり」
リセットボタンは、押されたのだ。
ここには居たかも知れない人は、新しい場所にはいないのだ。
涙も、ここに置いていく。
「さよなら」
祐希奈は身を翻し、ドアを開けた。
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