冷たくて涼しい場所


「ああっ! また上がってる!」
……ちっ。見つかったか。
私はひんやりした縁側から仕方なく下りた。
外は暑いんだってば。
風はないし。
土はとっくに干からびて熱いし。
木陰はむっとするし。
此処が一番冷たくて涼しいのに。
いいもん、小屋に入ってるもん――暑いけどさ。
私はマコトの様子をうかがった。
マコトもこっちを見ている。
上がりたい私と、上がらせたくないマコト。
……ううむ。暫く無理か。
私は溜息をついた。


……何か食べてる。
マコトが美味しそうにスプーンですくって口に入れている。
あれは、冷たくて甘いやつだ。
いいなあ。
私にも少しくれないかな。
少しでいいからさ。
舐められればいいからっ!
くれないかなあ。
……あ、こっちに来る!
「ムツキ、おいで〜」
マコトが紙のパックを持ってやって来た。
私は小屋から半分だけ身体を出して、その紙パックの中を舐めた。
……美味しいなあ。やっぱり。
私が綺麗に舐め尽くすと、マコトは頭を撫でてくれた。
……撫でられるのは、嬉しい。


コトン。
マコトの手から何かが落ちた。
……寝ちゃったよ。
寝た?
チャンスだ!
私はそーっと小屋を出て、縁側に上がった。
マコトは起きない。
静かに座って、横になる。
……やっぱり此処が一番冷たくて涼しい。
マコトも寝てるし。
私も寝ようっと。
私はそっと目を閉じた。


――その、30分後。
「ああっ! また上がってる!」

そして、また同じことが繰り返される。




(終わり)






[ 4/26 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -