或る朝


別れたくなんかなかった。
最近、そんな空気は漂っていたけど、元に戻れると信じていた。
それなのに。


一晩中泣いていても、朝は来る。
携帯のアドレス帳は1件削除した。
ラブラブな頃に一緒に開設したブログも、閉鎖した。
彼はすぐに新しい彼女と大っぴらにブログを作った。
オフ会で知り合った人達は何事もなかったかのように彼らと行き来をしている。
きっと、連れてる女の顔が違うことなど、あの人達にとっては大したことではないのだろう。
私は単なる付録でしかなかったのだ。
彼女が変わった。
それはアクセサリーをつけかえるようなもの。
その程度のことだ。


目に冷たいタオルをあてる。
こんな日でも仕事に行かねばならない。
雨が降っても。
風が強くても。
いっそのこと電車が止まればいいのに。
テレビをつけてはみるが。
そんなことが起こる筈もない。


顔を洗って。
残り物で朝御飯を食べて。
着替えて。
支度して。
鞄をつかんで部屋を飛び出す。
電車の時間まで間に合うか。
駅まで走る。
なりふりかまっていられない。
赤信号を苛々しながら待ち。
駅の階段を駆け上がると。
――2分前。
ほっとして、歩いて改札を通り、人の波に乗ってホームへと移動する。
今日も電車は満員御礼。
戦いが待っている。
携帯で音楽を聴きながら。
電車がホームに滑り込んで来て、ゆっくりと止まり、ドアが開く。
人がほんの少し吐き出され、その3倍の人間が電車に詰め込まれる。


私もその1人となるべく。
波に乗って電車に乗り込んだ。




(終わり)







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