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「や…やっと、着いた…」
息も絶え絶えになったジュリアンが隣町に着いたのは、もうあたりが暗くなり始めた頃だった。
「と…とにかく、港に行かなきゃな…」
ジュリアンは身体に残った体力を振り絞るようにして、港へ急ぐ。
「ちょっと尋ねたいんだが…」
港の詰め所に駆けこんだジュリアンは、早速そこにいた男に声をかけた。
「あんた、どうしたんだ?
えらく疲れてるみたいだな。」
ジュリアンはすすめられた椅子にどっかりと腰を降ろす。
「ありがとう。
実は、ちょっと人を探しててな。
黒い巻き毛で痩せ型で、こっちの頬にほくろのある27〜8歳の男をみかけなかったか?」
「ちょっと待ってくれよ。」
男はそう言い残し部屋の奥に消えて行った。
「人探しをしてるんだって?」
先程の男が、別の男を伴なって現れた。
「あぁ、黒い巻き毛で痩せ型で、こっちの頬にほくろのある27〜8歳の男を探してるんだ。」
「あぁ…それなら…」
「見たのか?!」
「それらしき男を見たよ。
なんだか様子がおかしくてな。
もしかしたら、船の上から飛び降りたりすんじゃねぇかと気になったんで、乗組員には注意するように伝えといたんだ。」
「そ、そ、それで、そいつはどこに行ったんだ?」
「東の大陸だ。」
「東の大陸!?
そこまではずいぶん遠いんじゃないのか?」
「あぁ、何ヶ月もかかる。」
「そんな遠くへ…
まいったな、だが、仕方ない。
それで、次の船はいつ出航なんだ?」
「それなら、3ヶ月後だ。」
「さ、3ヶ月後だってぇ〜?!
馬鹿言うな!そんなことしてたら、アルドーの行方がすっかりわからなくなっちまう。
なんとか船を出してもらえないか?」
「あんた一人のためにそんなことは出来ないな。諦めな…」
「そんなぁ…」
アルドーの手掛かりがみつかったのは良いが、船は出た後…
追いかけ様にも次の船の出航は3ヶ月後だと聞かされ、ジュリアンは途方に暮れた。
『とりあえず、少し休んで考えるしかないんじゃないか…?
ここんとこ、ほとんど食事も採っていないのだから、何か食べて…』
「おまえにしちゃあ優しいこと言うじゃないか…
珍しい事もあるもんだな。」
『おまえがあまりにも情けない顔をしてるからな。』
「そんなにひどいか?」
『あぁ、ひどいもんだ…』
「そうか…」
ジュリアンは肩を落とし、重い足をひきずりながら、宿を目指した。
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