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宿の前では心配したマージの両親が、不安そうな顔をしながら立っていた。
ぐったりとした娘の姿に混乱する両親に向かって、ジュリアンはあれこれと指示を出す。
マージはかなり弱っているようではあったが、死んではいなかった。
幸いなことに、宿の泊り客に医者がいたため、マージはすぐに適切な手当てを受ける事が出来た。



「マージ!しっかりするんだよ!」

「先生!マージは、マージは大丈夫ですか!?」

「大丈夫ですよ。
危ない所でしたが、水も吐かせましたし、もう命に関わるようなことはないでしょう。
このまま暖かくして安静にしていれば、明日の朝には目を覚ますでしょう。」

「ほ、本当ですか!」

「良かった…本当に良かった…」



医師のその言葉にほっとしてジュリアンの身体の力が抜けた。
一気に身体と張り詰めていた精神の緊張がほぐれ、ジュリアンはそのままその場所で眠りに就いてしまった…







「マージ!!」

「マージ、わかるかい?
気分はどうだい?」
「父さん、母さん…私…」



(……ん…?ここは?)

目を覚ましたマージ、そしてそれを喜ぶ両親の声でジュリアンは目を覚ました。
激しかった風雨はずいぶんとおさまり、空からは静かな雨が降っているようだった。



「お客さん、マージが目を覚ましたんですよ!
昨夜は本当にどうもありがとうございました!」

「あ……マージ…!
気が付いたんだな…!
良かったな!本当に良かった!」

「ジュリアンさんが助けて下さったんですね。
ありがとうございました。」

「何を言ってるんだ。
あんたを助けたのはハリーだよ。」

「ハリーが?!
まさか…!ハリーはこの町を出て行ったんじゃあ…」

「それが、違っててな…
実は、ハリーは…」



そこまで言いかけてジュリアンの言葉が止まった。



「ハ、ハリーは戻ってないのか?
ここに来ていないのか?」

「え…ええ。
あなたがマージを運んで来て下さった後は、ここには誰も…」

「そ…そんな…」

「ジュリアンさん、ハリーは…ハリーはどうしたんです?!」

「流されてるあんたを、川に飛び込んで助けたのはハリーだ。
あんたを助けた後、奴は歩けないほど衰弱しててな。
自分は大丈夫だから、早く、あんたを宿屋へ運んでくれって言うんで、俺はあんたを背負ってここまで来た。
……じゃあ…ハリーは…!!」



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