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『おまえも知っているだろうが…
私には元々決まった姿というものがない。
だから本来なら姿は見えるはずがないのだ。
だが、見えたと言う事は、あの時、おまえのエレスチャルに対するイメージのようなものが私に投影されたからだ。
そのせいで私はこのような姿になった。
……おまえは、エレスチャルをとても美しいと思ったのではないか?」
「え…!?そ、そりゃあ思ったが…
だ、だって…あんなに見事な石はめったに出会えるもんじゃないし…」
渋い顔をしながらも、ジュリアンはその事実を認めた。
『美しいという観念にもいろいろあるが…
繊細で艶やかさを持つ完璧な美しさを感じたのだろう。
だから、私はこんな姿になった。
おまえが無意識にイメージした通りにな。
……それに、あの時、私は言った筈だ。
女の姿の方がよければ女になるし、老人が良いのなら老人になろうと…
だが、おまえは私のそんな好意を退け、このままで良いと言ったのだぞ。』
「そ、そ、そりゃあ、確かにそう言ったが……」
エレスの言葉に間違いはなく、そのためジュリアンは返す言葉を失い、次第に俯き口の中でもごもごと何事かを呟いた。
『……それなのに、ずるい等といわれるのは心外だ。』
エレスは言葉少なにそう言うと、冷やかな視線をジュリアンに向けた。
「そ…それはすまなかったな。」
そっぽを向いて、小さな声でそう呟いたジュリアンに、さらにエレスの追い討ちがかかる。
『……ひょっとして……今のは謝罪のつもりなのか?』
「……あぁ、そうだよ!
すみませんったらすみません!
俺が、悪うございました!」
『……なんだ、その態度は。
謝るのなら心から謝る。
謝りたくないのであれば、謝らない根拠をだな…』
「あーーーっ!町だ!!
やっと着いたか!」
ジュリアンは、まだブツブツと文句を言っているエレスを残し、町に向かって駆け出した。
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