「マージ、どうしたんだい?」

「あ…ケネス様…
なんでもないんです。」

「なんでも…って…泣いてたんじゃないのかい?」

「たいしたことはありませんわ。」

「それなら良いのだが…何か困ったことがあるのなら、遠慮しないでなんでも私に話しておくれ。」

ケネスは、そっとマージの手を握り締め、マージは困ったような表情を浮かべた。



「まぁ!ケネス様!
いらしてたんですか?
あ…あの…今月の支払いでしたら…」

ケネスに気付いたマージの父親が、おどおどと言い訳をする。



「今日はそんな話をしにきたのではありません。
そろそろ、マージにあの返事をもらえる頃かと思いましてね…」

「そうでしたか…
マージ、おまえ、まだ気持ちが決まらないのか?
あんまりお待たせしてはいけないぞ。」

「マージさん、私のことがお嫌いですか?」

「そ、そんなことはありません。
わ…私のような者にはケネス様はもったいないような気がして、それで…」

「そんな気遣いは無用ですよ。
私はあなたのことが好きなのです。
遠慮等することはありません。」

「マージ、ケネス様もこうおっしゃって下さってるんだ。
いいかげん、お返事をしたらどうなんだ?
それとも、なにか結婚したくない理由があるのか?」

「いえ…そんなものは…ありません。」

「では、私と結婚して下さるんですね。」



マージは一呼吸置いた後、ゆっくりと頷いた。



「おぉ、それは嬉しい!
ここまで来てみた甲斐がありましたよ。
すぐにでも準備を始めましょう!
あぁ、あなたはなにもしなくて良いのですよ。
ドレスも式の手配もすべて私に任せておいて下さい。」

「マージ、おめでとう!
おまえは本当に幸せ者だな!
さぁ、母さんにも知らせて来なくちゃな!
ケネス様、本当にどうもありがとうございます!
マージのことをどうぞよろしくお願いします!」

マージの父親はケネスの手を取り、涙を流さんばかりに喜んでいる。



マージとケネスの出会いは数ヶ月前のことだった。
たまたま、この地に立ち寄ったケネス氏の一目惚れだった。
その直後、この地を大きなハリケーンが襲った。
その時の宿の修繕費を立て替えてくれたのも、ケネス氏だった。
やがて、マージはケネス氏からのプロポーズを受けた。
しかし、マージの心の中には、すでに愛する人がいた。
そう…ハリーだ。


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