次の朝、いつもとほぼ変わらない時間に目覚めたジュリアンはゆっくりと時間をかけながら顔を洗う。



『まだそんなことをやってるのか?
いやなことはさっさと済ませてしまった方が良いのではないか?』

「なんだよ。
おまえは、見てるだけだからなんともないだろうけどな。
俺は、まるで死刑執行人の気分だよ…」

『相変わらず、おまえの言うことは大袈裟だな…』

「あ……」

『どうした?』

「畜生〜!
すっかり忘れてたぜ!」

『何をだ?』

「このガーネット、ハリーにやろうと思ってたのに…」



ジュリアンは、昨日、掘り当てた大きなガーネットの原石に目を落した。



「仕方ないな…
じゃ、とりあえず、マージの所に行って来るよ…」



重い足取りでジュリアンは階段を降りて行く。



「マージさん!」

「はい、なんでしょうか?」

「実は…ちょっとハリーから預かったものがあってな。」

「ハリーから?!」

「あぁ…これなんだ。」



ジュリアンは、ハリーから預かった封筒をマージに手渡した。
マージが封を開けると、そこに入っていたのはお金だった。



「お金だわ!ジュリアンさん、これは一体?!」

「金?……そうか…それは慰謝料のつもりなのかもしれないな…」

「慰謝料?なぜ、ハリーが私にそんなものを?
どういうことなんです?」

「実はな…
言いにくい話なんだが…
ハリーは近々結婚するんだ。
それで、これからはその女性の住む町で一緒に暮らすらしい。
多分、その金はそのことに対するあんたへの慰謝料のつもりだったんじゃないか?」

「ま…まさか、そんなこと…!
誰なんです?
ハリーはどこの誰と結婚するんです?」

「そ、そんなことは聞いちゃいないよ。
マージさん…あんたには酷な話だが、ハリーの事はもう諦めた方が良い。
だいたい、あんたには婚約者もいるって話じゃないか…」

「……ハリー……
あんまりだわ…!!」



マージは泣きながら、部屋の奥へ走って行った。



(あぁ…最悪…
こんな役目、引き受けなきゃ良かった…
……酒でも飲むかな…)



ジュリアンが宿の外へ出ようとした時、一人の男とぶつかった。



「あ、すまねぇな。」



男は、冷ややかな目でジュリアンを一瞥すると、黙ってカウンターの奥へと入って行く。



(チッ、なんだ、あの野郎!
感じ悪いな!)


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