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「あ、あとしばらく滞在することにしたから、よろしく頼むよ。」
「かしこまりました。」
「それと…」
「何か…?」
「あ…あぁ…なんでもないんだ。」
マージにハリーのことを話そうかと考えたジュリアンだったが、またあんな悲しい顔をされるかと思うと、やはり言うことは出来なかった。
ジュリアンは、昨日ハリーに教えてもらった場所に向かうと、早速、採掘作業を始めた。
これといって特別な石は出て来なかったが、一つだけ大きなガーネットがみつかった。
(これは、けっこう良質な石だ!
……そうだ…!)
ジュリアンは、ガーネットを見ながら突然ひらめいたアイディアに一人ほくそ笑む…
*
宿に戻ってしばらくすると、ハリーがジュリアンの部屋を訪ねた。
「ハリー!よく来てくれたな!
ちょうど良かった!」
「なにかあったのか?
実は、今日はちょっとあんたに頼みたいことがあってな。」
「俺に頼みたい事?一体、何なんだ?」
「俺は明日の朝、この町を発つ。
それで、俺がいなくなった後、これを…マージに渡してほしいんだ。」
「なんで自分で渡さないんだ?」
「それは…やっぱり言いにくいじゃないか。
頼むよ。」
「そうか、わかった。
で、中身は何なんだ?」
「たいしたもんじゃない。
それと、すまないんだが、俺がこの町を出て結婚することもあんたからマージに伝えてくれないか?」
「それも俺が言うのか?!」
「あぁ、頼むよ…
それじゃあ、俺、これからちょっと用があるから…
じゃあな!」
「あ…あぁ…」
そそくさとその場を立ち去るハリーを見送り、ジュリアンは長椅子に腰を降ろし、小さな溜息を吐いた。
「あ〜ぁ…やな役ひき受けちまったなぁ…
マージ、きっと哀しむだろうなぁ…」
『ならば、なぜ、断らなかった?』
「そうは言っても、ハリーもきっと俺以外に頼める奴がいなかったんだろうしなぁ…」
『おまえは本当にお人好しだな…』
「仕方ないだろ!
そういう性分なんだから…!
さてと、今夜はもう寝るか…」
『早寝の割にはいつも起きるのは遅いんだな。』
「俺は、そういう体質なの!」
明日、マージにハリーの言伝を話さなくてはならないことを考えると心は重かったが、そんな悩みがあっても横になるとすぐに眠れるというのも、これまたジュリアンの体質(?)だった…
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