「ハリー…マージのことなんだが…」

「また、それか…そのことなら昨夜も言ったじゃないか。
マージとはなんでもないんだ。ただの友達なんだって。」

「嘘吐くなよ。
俺にはとてもそうは思えねぇ!
おまえ、本当はマージのこと…」

「嘘じゃないさ。
あんな借金まみれの宿屋の娘のことなんか、なんとも思っちゃいないよ。
第一、俺はもうすぐこの町を出ていくんだ。」

「この町を…?
本当なのか?」

「あぁ、石炭ももう採れなくなったし、ここにいても仕事がないからな。」

「仕事が…?
もしかしたら、それであんたはマージのことを諦めるつもりになったんじゃないの
か?」

「馬鹿を言うなよ。
そんなことは何も関係ない。
俺には……実は、以前から決まった女がいるんだ。
今まではいろんな事情で離れてたんだが、仕事のことで気持ちが決まった。
俺は、この町を出て、その女の住む町で一緒に暮らすことに決めたんだ。」

「本当なのか?!」

「あぁ、本当だ。
だから、マージのことは関係ないんだ。」

「そうだったのか…」



ジュリアンとハリーは、昼過ぎまで語り合いながら酒を酌み交わした。



「じゃあ、幸せにな!」

「あんたもな!」



ハリーと別れたジュリアンは少し気の抜けた感触を感じながら部屋に戻った。



『……どうやら、おまえの勘違いだったらしいな。』

「勘違いかどうかはわからないが…
とにかく、マージには気の毒だが、ハリーの方にはその気はなさそうだな。」

『マージにも婚約者はいるのだろう?』

「ハリーはそう言ってたけどな…」

『とにかく、おまえが介入することは何もなさそうで良かったじゃないか。
では、明日、この町を発つのか?』

「そう思ったんだがな。
炭坑のそばに石が出る場所があるって話だから、そこをちょっと掘ってからにする
よ。
別に急ぐ旅じゃないんだからな。」

『おまえは本当に石が好きなのだな…』

「石好きで悪かったな…」


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