恋1
『おい、ジュリアン、今度はどこに行くつもりなんだ?』
「どこって……いつもと同じくあてなんてないさ。
とりあえず、どこでも良いから今は早く町に行きたいんだ。」
『このくらいでもう疲れたとでも言うのか?
おまえらしくもない…』
ジュリアンは、顔の前でひとさし指を揺らしながら、舌を鳴らす。
「違う、違う。
町に着いたら、誰かさんが秘密を教えてくれるらしいからな。」
そう言って、ジュリアンはエレスに向かって意味ありげな微笑を送った。
『なんだ、そんなにあのことが知りたかったのか?
……おまえ、もしかしたら私のことが気になっているのか?!
そうか…私に相当関心があるのだな…』
「……は?」
にこやかに笑みを浮かべるエレスを、ジュリアンは間の抜けた顔でみつめる。
『……おまえは、なぜそういう知性のない表情をするんだ?
元々おまえは下品でガサツなのだから、表情くらいもう少しマシには出来ないのか?』
さっきの穏やかな微笑みから一変し、眉をひそめ、ジュリアンに小言を言うエレスに、ジュリアンの怒鳴り声が響いた。
「悪かったな!
俺は、元々下品でガサツだから、知性的な表情なんて出来ないんだよ!
なんだよ、ちょっと自分が美形だからって、人のこと馬鹿にしやがって…
だいたいその姿だって、本物じゃないんだろ!
どんな姿にでもなれるからって、そんなに良い恰好にしなくても良いんじゃないのか!
やることがずるいんだよ、おまえは!」
『何を言う……私がこうなったのは元はと言えばおまえのせいなのだぞ。』
「な、な、なんだって!
なんで、俺のせいなんだ!
なんでも他人のせいにしてるんじゃねぇぞ!」
まくしたてるジュリアンに、エレスはわざとらしく肩を落とし、大きな溜め息を吐く。
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