「う…う〜ん…」



開け放たれた窓から、冷たい風が吹き込んでいた。
風は冷たいが、天気は良い。
まだはっきりしないジュリアンの意識の中に、テーブルの上のエレスチャルの姿が飛びこんだ。
ジュリアンは起き上がり、あわてて皮袋の中にエレスチャルを納めると、その皮袋を首から下げた。
宝石に比べるとそれほど高価なものではないが、石好きなジュリアンにとってそれは、エメラルドやダイヤよりも大切なものだ。
一安心したジュリアンは再びベッドに横になった。



(…しかし、昨夜はおかしな夢を見たもんだ。
石の精と話してる夢を見たなんて言ったら、まわりの奴らになんて言われることか…
しかも、息を飲むほど美しい石の精…
「おまえはずっと独りで石ばっかり掘ってるからそんな夢を見るんだ。早く結婚しろ!」…なぁんて言われそうだなぁ…
昨夜は酒も飲んでなかったのにな。
でも…ちょっと面白い夢だった…)



エレスの顔を思い出すように目を閉じ、再び目を開けた時、ジュリアンの顔の前にはエレスの顔があった。



「げっっっ!」

『……なんという声を出すんだ…
まったくおまえは品のない男だな…
もうずいぶん陽も高くなってるようだが、まだ起きないのか…?』

「…お…おまえ…!」

ジュリアンの心臓は飛び出しそうな勢いで脈打っていた。



『どうかしたのか?
顔がひきつっているぞ。』

「あ、当たり前だ!
おまえのことは夢だったんだと思った矢先、いきなり目の前に現れたんじゃ、誰だって驚くさ!」

『…本当にわからない男だな…
昨夜、おまえは起きていたではないか。
夢とは寝ている時に見るものだろう…?』

「そりゃあそうだが…じゃあ…おまえは本当に石の精だってのか?!」

『…それも昨夜言ったではないか…』

「…………」



ジュリアンは何を信じて良いものやら、すでによくわからなくなっていた。
確かにジュリアンにははっきりとエレスの姿が見えてはいるのだが…しかし…石の精なんてものがこの世にいるのか?!


(そうだ!…こんな時は…)

ジュリアンは、自分の頬を思いっきりつねった。



「い、痛てぇ…!」

(…ってことは、やっぱり、これは現実…なのか?!)

ジュリアンは、混乱したままその場に呆然と立ち尽くす。



『……おまえ…どこか悪いのか…?
一体、何をしているのだ?』

「…な…なんでもねぇ!
さぁ、起きるぞ!でかけるぞ!」

『どこへ行くのだ?』

「そうだな…とりあえずは家に帰る。」


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