18
*
『ジュリアン…』
「わ、わぁっ!び、びっくりさせんなよ。
急に出て来んなっていつも言ってんだろ!」
突然のエレスの出現に、ジュリアンは驚き身体のバランスを崩した。
『……すまなかった。
それと、事情が変わった。
今日は、イヴの所へは行くな。』
「……は?何言ってんだ、おまえ。
俺はわざわざ市場に行って果物買ってきたんだぞ。」
『詳しいことは、宿で話す…』
そう言い残し、エレスは空気に溶け込むように姿を消した。
「なんだ、あいつ……?」
ジュリアンの自然が宙をさ迷う。
エレスが何のことを言ってるのかは皆目わからなかったが、とりあえず、エレスの話を聞くため、ジュリアンは宿へ向かった。
*
「な、な、な、な、なんだってーーーー!!」
狭い部屋の中にジュリアンの尋常ではない叫び声が響いた。
『……なんという馬鹿でかい声を出すんだ。』
エレスが耳を押さえ、顔をしかめる。
「な、な、な、なんてことを……」
エレスがイヴに勝手なことを話したことを知り、ジュリアンの心は、これ以上ない程に困惑し、真っ赤になった顔色はいつの間にか真っ青なものに変わっていた。
『おい、しっかりしろ。
酒でも飲んでみたらどうだ?
おまえ…死人のような顔になっているぞ…』
「て、て、てめぇのせいだろ!!
俺が本当に死んじまったらおまえのせいだからな!」
『だから、落ちつけと言っているのだ。
ほら、それを一杯ぐいっといけ。』
エレスに促されるまま、ジュリアンはテーブルの上の酒瓶を掴み、それを瓶ごとぐびぐびとあおる。
『……どうだ、少しは落ちついたか?』
「そんなに急に落ちついてたまるかってんだ!
……あぁ〜〜、どうしよう!どうしよう…
イヴ、怒ってないかな…きっと怒ってる…いや困ってるかもしれないなぁ…
あぁぁぁ…えらいことになっちまった…
……そうだ!やっぱり、イヴの所に行こう!
行って、あれはエレスが勝手に言ったことで、俺には何の下心もないって言うんだ。
うん、そうだ!それが一番だ!」
膝を叩き、立ちあがったジュリアンの肩にエレスが優しく手を置いた。
『ジュリアン…やめておけ。
イヴの返事をこのまま待つんだ。』
「やなこった。
おまえがくだらないことを言うから、イヴは今頃、どうやって断ろうかと困ってるに違いないんだ。
可哀想じゃないか、早く楽にしてやらないと…」
『良いから、座れ!』
いつになく強い力を込めてエレスはジュリアンの肩を沈め、再び、椅子に座らせた。
- 130 -
しおりを挟む
コメントする(0)
[*前] | [次#]
トップ 章トップ