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次の朝、いつものようにイヴの家へ向かうジュリアンの表情は、昨日までとは違い浮かないものだった。



『それにしても酷い顔だな…昨夜は眠れなかったのか?』

「ふんっ!知るか!」

目の下にくまを作ったジュリアンが、不機嫌に答える。



『…そうだ、ジュリアン。
昨日、イヴが果物がないから買って来てほしいと言ってたぞ。
今から買って来てくれ。』

「……おまえなぁ…なんでこんな所で言うんだ。
イヴの家はもう目の前じゃないか。」

『まぁ、そう言うな。
私だって忘れることくらいあるさ。
では、頼んだぞ…』

小さい舌打ちを残し、ジュリアンは今来た道を市場に向かって引き返す。
ジュリアンは不機嫌な顔をしてはいたが、内心ほっとした気分もあった。
今朝のジュリアンは、イヴに会うのが嬉しくもあり、恥ずかしく、悩みの種でもあったのだから…







『おはよう、イヴ。』

「…あ、エレスさん!おはようございます。
あぁ、びっくりした…」

イヴは不意に現れたエレスに、驚いたような顔を向けた。



『驚かせてすまない。
鍵が開いてたので勝手に入らせてもらった。』

「まぁ…私ったら鍵をかけ忘れてたなんて…
だめね、もっとしっかりしなくちゃ…
あの…それで、ジュリアンさんは?」

エレスにはまだ物質に自分を反応させることは出来ない。
ドアをノックして音を出すことも出来ないため、エレスは適当な嘘を吐いた。



『あぁ、あいつは何か買い物があるとか言って市場に行った。
少し遅れるが、先に行ってくれということだったので私一人で来た。』

「そうだったんですか。
じゃあ、朝食はジュリアンさんが来られてからで良いですね。」

『そうしよう…
イヴ……実は、君に少し話があるのだが…』

「……お話ですか?
なんですか?」

イヴは、エレスの声の向かいに腰を降ろし、神妙な顔を向けた。



『イヴ…君とジュリアンのことが町の噂になっていることは知っているか?』

「私とジュリアンさんのことが町の噂に…!?
いえ、全然知りませんでした。
でも、いつも三人でいるのに、なぜジュリアンさんだけが?」

『私は人と出会うのが嫌いだから、人目につく場所ではいつも少し離れた所にいる。
だから気付かれていないのだろう。
あいつはいつでも君の傍にいるし、声も大きいからな。』

エレスの姿が他の者には見えないことは当然イヴにも言えない。
そのことを取り繕うため、エレスは再び、嘘を吐いた。


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