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「ジュリアン、ありがとうな。」
「いや、たいしたもんじゃなくて悪いんだけど…
スージー、幸せになってくれよな。」
「ありがとう、ジュリアンさん。」
「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。」
「急がなくても良いじゃないか、ゆっくりしていけよ。」
「いや…そろそろこの町を発とうと思ってるんだ。」
「そうか…それは残念だな。
でも、あんたにもきっと都合があるんだろう…
ジュリアン、今回は本当に世話になったな。
あんたのことは忘れないぜ。またいつでも遊びに来てくれよな。」
ジュリアンとラリーは固い握手を交わし、
名残惜しそうにする二人に手を振り、ジュリアンはラリーの家を後にした。
『どうした?
そんなに急ぐ事はなかろう。
それとも、何か急ぐ理由でもあるのか?』
不意に姿を現したエレスにも、ジュリアンは動じない。
「理由なんてないさ。
なんとなく、旅に出たくなっただけのことさ。」
『そうか…それも良かろう。』
宿に着いたジュリアンは、少ない荷物を手早くまとめ宿を出た。
『そういえば、大きなペリドットはスージーとディックにやってしまったし、小さなものは売っ払ってしまったのだな。
結局、おまえの手許には一つも残らなかったのだな。』
街道を歩きながら、エレスがぽつりと呟いた。
「まぁ、良いさ。
きっと、それは、俺には、今、ペリドットが必要ないってことだろうさ。
気分も晴れやかだし、妻もいないからな。」
『そうかもしれないな。
あの石達は必要とされる所へ行ったのだろう…』
「そういえば…」
『どうした?』
「おまえ、今回はあの薄気味の悪い笑いをしないな。
今回は良いことはなかったのか?」
『……なんだ、覚えていたのか。
もちろん、今回もあったぞ。』
そう言って、エレスはにっこりと微笑む。
「なにがあったかは、どうせ、教えてくれないんだろう?」
『なぜそんな風に思う?
知りたいのなら、話すが…』
「本当か?じゃあ、教えてくれよ!」
『それはだな……
やはり、こんな所では落ちついて話せないな。
町に着いたら話すことにしよう。』
「絶対だな!
嘘だったら、酒おごってもらうからな!」
『……私は金は持っていないが…』
「あぁぁぁ〜…
じゃ…じゃあ…」
考えこむジュリアンの肩をエレスはぽんと叩いた。
『つまらぬ心配をするな。
精霊は人間と違って嘘など吐かん。』
ジュリアンはその言葉に諦め顔で頷いた。
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