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「あっ、もう朝になってたのか…」

「なんだ、気付いてなかったのか。
もうじき、奴を連れてかなきゃならないから、パンとミルクを持って来たんだ。
あんたも食べるか?」

「良いのか?すまないな。」

ジュリアン達がパンとミルクの軽い朝食を食べ終えた頃、自警団の男達が到着した。



「あ、あんたはこのまえの…確か、ライナスだったよな?
あんたも行くのか?」

「いや、俺は自警団じゃないからいかないよ。
ただ、ディックがどうしてるか、ちょっと気になってな。」

「話があるなら今のうちにすませておけ。
馬車が着いたらすぐに連れて行くからな。」

自警団の男に促され、ライナスとジュリアンは留置場へ向かった。



「ディック…ラリー達になにか伝えておくことはないか?」

ライナスは檻の中のディックに優しく声をかけた。



「…すまなかったと…それと、スージーに幸せになってくれとだけ伝えてくれ。」

「それだけで良いのか?」

ディックは黙って頷いた。



「よし、わかった。必ず伝えておくよ。
じゃあ、身体に気を付けてな。
ディック…頑張れよ!」

「ありがとう、ライナスさん…
……あ、そうだ!」

「なんだ、何か思い出したのか?」

「あの…僕……その……」

ディックは、何か言いたい事があるようだが、その先の言葉がなかなか出てこない。



「ディック、馬車が着いたらすぐに出発するって行ってたぞ。
伝えたいことがあるなら今のうちに言っとけよ!」

ジュリアンのその言葉でディックの気持ちは固まったようで、やっとその重い口が開かれた。



「ライナスさん…あの…祭りの寄付金のことだけど…」

「寄付金?……あぁ…もうそのことなら気にするな。
おまえはちゃんと償った。もう誰もあのことを気にしてるやつはいないさ。」

ジュリアンとディックはライナスの黙って顔をみつめる。



「俺達にはわかってたよ。
毎年、匿名で寄付されてたあの金…あれはおまえがやってたんだろ?
あの事件以来、おまえは祭りには顔を出さなかったが、毎年欠かさず匿名の寄付が届いた。
皆、馬鹿じゃないんだ。
あれがおまえのしたことだって、すぐにわかったよ。」

「ぼ、僕はそんなこと…」

「良いんだ、隠すな、隠すな。
……あ、馬車が来たんじゃないか?
ちょっと見て来るよ。」

ライナスはそう言ってその場を後にした。


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