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「お、おいっ!一体、どうしたってんだ?」

ディックは石を胸に抱いて、涙を流し続けた。



「ディック…大丈夫か?」

「母さんだ…母さんが僕を心配して来てくれたんだ…」

「おふくろさんが?」

ディックはゆっくりと頷いた。



「僕の母さんはいつも緑色の石がついたペンダントをしてた。
それは父さんが母さんに贈ったものだそうで、母さんの誕生石だと言ってたよ。
母さんはそのペンダントをとても大切にしてたんだ。
だけど、ある時、どうしても薬代が足りなくなってそのペンダントを手放すことになったんだ。
僕はそれがエメラルドだと思ってたからきっと良い値段になると思ってたら、道具屋でその石はペリドットだというものだと言われたんだ。
だから、思った程の金にはならなかったけど、そう高い石じゃないとわかったから、いつか僕がまた母さんにその石を買ってあげようと思ってたんだ。
……結局、買ってあげる事は出来なかったけどね…」

ディックは、一気に話し終えると哀し気な笑みを浮かべる。


「そうか…そうだったのか。
きっとおまえの言う通りだ。
おまえのおふくろさんが、おまえのことを心配して来てくれたんだ。
おふくろさんは、いつでもおまえのことを見守っててくれるんだな。」

「ありがとう…本当にありがとう…」

ディックは、ジュリアンの手を取り、ぎゅっと握り締めた。



「お、おい、こらっ!もう泣くなよ。
ハンカチがびしょびしょじゃないか!」

「ありがとう…ありがとう…!」

仕舞いにはジュリアンに抱きついて涙を流すディックの細い身体を、彼の涙が止まるまでジュリアンは抱き締めていた。








「お、おまえ、どっから入ったんだ!?」

朝になり、昨夜、椅子の上で眠りこけていた男が、留置所の中のジュリアンを見て声を上げた。



「え…?……あぁ〜〜、あんた、忘れたのか?
昨夜、ディックに会わせてくれって頼んだら、あんたが入れてくれたんじゃないか!」

「えっ?俺が??」

男は首を傾げる。



「あんた、やっぱり相当酔っ払ってたんだな。
そうじゃなきゃ、覚えてないはずがない。」

「い…いや、覚えてる。
俺は寝酒程度にほんのちょっとしか飲んでないんだから。
……そ、そうだ!今、思い出した!俺があんたを入れてやったんだ。
俺は朝に弱いから、ど忘れしてただけなんだ!」

「そうだったのか。
じゃあ、開けて出してくれ。」

「おう…あれっ?
鍵がないぞ!?」

「ほら、そこにあるじゃないか。」

ジュリアンは、壁際に落ちている鍵を指差した。



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