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「……ラリーとスージーはよく家にも遊びに来てくれた。」

「え…?」

「花やおふくろの好きだったりんごを持って、よく遊びに来てくれたんだ。」

「……そうか…
おふくろさんも喜んでくれただろうな。」

「あぁ、とても喜んでたよ。
で、いつも言ってた。
おまえは良い友達を持って幸せだって。」

「…そうだったのか…
良かったな。今日、おまえがとんでもないことをしでかしてしまわなくて…
そうなってたら……おまえのおふくろさんはきっとすごく悲しんでたぜ。」

ディックの押し殺した嗚咽が、狭い留置場に悲しく響く…
ジュリアンは、そんなディックの肩を優しく叩いた。







「……僕、出来るだけ遠い町に行く事にするよ。」

ジュリアンの差し出したハンカチで、ディックは涙を拭い、涙声でぽつりとそう呟いた。



「出来るだけ遠い町の拘置所に送ってもらって、そこで罪を償いながらこれからのことを考えてみようと思う。」

「そ、そうか…
それは良い心がけだ。
場所が変われば気持ちも変わるもんだからな。
……ほんの小さな想い違いや気持ちのすれ違いが、時として大きなわだかまりになってしまうことがある。
でも、真面目に生きてりゃきっといつかわかりあえる日も来るさ。」

ディックは、俯いたまま小さく頷いた。



「いろいろありがとう。
あんたとは知らない仲なのに、すっかり世話になったな。
なんで、こんなに僕の事を気にしてくれるんだい?」

「そ、そりゃあ、俺は馬鹿だからよ!
たいしたことは出来ないが、俺は自分に出来る事はどんなつまらないことでもやらなきゃ気がすまないんだ…
あ!そうだ!」

ジュリアンは、上着の内ポケットからペリドットの原石を取り出した。



「これ、おまえにやるよ。」

「なんだい、これ?」

「これは、ペリドットって石だ。
太陽の石って言われてて、気持ちの沈んだ時なんかに…」

「ペリドット…!?
もしかして、これは磨いたら明るい緑色の宝石じゃないかい!?」

ディックはジュリアンの言葉を遮り、大きな声を出した。



「そうだ…知ってるのか…?」

ディックの瞳から、再び涙がこぼれ落ちる。




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