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「なんとも言えない気分だな…」

酒には目のないジュリアンも、今夜だけは飲む気になれず、ペリドットをスージーに託け宿に戻った。



『おまえはやれるだけのことはやった…
後は彼らの問題だ…』

「俺が、あの時、ラリーの家じゃなく詰所にいたら…」

『またそれか…
おまえはなぜそうなんでもかんでも自分のせいにしたがるのだ?』

エレスはうんざりしたように眉をひそめる。



「だってそうだろ?
俺があの時、あっちにいたらもしかしたら…」

『……もう止せ…
前にも言っただろう?
同じ時にはもう二度と戻れないのだ…』

「そんなこと、言われなくてもわかってらぁ!
だけど…言う位良いじゃないか!
……畜生、こんなことなら、やっぱりラリーと飲んでくれば良かったか…
そうだ…今から酒場に行って来るか…」

ジュリアンは、テーブルの上の置き時計に目をやった。



「まだ0時前だったのか…」

文字盤から視線を戻したジュリアンの瞳が急に大きくなる。



「おいっ!エレス!
同じ時ってのはどういうことだ!?」

ジュリアンは立ちあがり、エレスに詰め寄った。



『……一体何を言っている?
同じ時とはその言葉の通りではないか。』

ジュリアンの両手を迷惑そうに払い除けながら、エレスが答える。



「そうじゃなくて!
日付なのかどうなのかって聞いてるんだ!」

振りほどかれた手で再びジュリアンはエレスの腕を掴んだ。



『日付…?
どういうことだ?』

「あぁ、もう全くまどろっこしい奴だな!
だから、同じ時っていうのは同じ日なのかどうなのかって聞いてんだ!」

『同じ時には戻れないといわれてはいるが、それが日付のことなのかどうか等、そんな細かいことは知らん。』

エレスは、ジュリアンの手をもう一度払い除ける。



「そ、それなら、もしかしたら…!!」

ジュリアンは、そう言いながら懐の中からエレスチャルの入った皮袋を取り出した。



『何をするつもりだ…?』

「戻るに決まってんだろ!
そして、ディックを助けるんだ!」

『無理だと言ったではないか。』

「無理じゃない!
ディックがスージーを襲ったのは確か日付が変わる前だった。
ディックが首を吊ったのは夜明けだから次の日になるんだ。
だったら、『同じ時』じゃないんじゃないか!?」

ジュリアンはエレスに同意を求めるような視線を向けた。


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