「……ここは…」



ジュリアンは、部屋の中をきょろきょろと見回す。



「エレス!おかしいぞ!
さっきのままだ!失敗したのか?」

『……窓の外を見てみろ。』

「窓の外…?
あ……!」

ジュリアンは、窓の外がまだ漆黒の空ではないことに気が付いた。



『戻り方がうまくなったな。』

「ってことは…」

ちょうどその時、扉を叩く音が聞こえた。



「ジュリアン、いるか!」



(ラリーだ!じゃあ、今は…)

エレスは、ゆっくり頷いた。



「あ、ちょっと待ってくれよ!今開けるからな!」

ジュリアンが扉を開けると、にこやかな顔のラリーが立っていた。



「ちょっと早かったか?」

「いやいや、全然!」

「そうか、良かった。
実は…」

「わかってる、わかってる。
スージーに邪魔だって追い出されたんだろ?」

「……え?!なんでわかるんだ?」

「俺はカンが良いんだよ。
そんなことより早く行こうぜ!」

ジュリアンは、ラリーの腕をひきながら近所の酒場へ向かった。



「あんた、本当にこの町は初めてなのか?」

「なんでだ?」

「この酒場の場所も知ってたみたいだからさ。」

「だ、だから、さっきも言ったろ?
俺は、昔からカンだけはすごく良いんだって。
そんなことはどうでも良い。
なぁ、スージーのことを教えてくれよ。
婚約者の名前はなんて言うんだ?」

唐突なその質問に、ジュリアンの顔を訝しげにみつめながらもラリーは答えた。
スージーの婚約者の名は、ロッシー。
二人の出会いは偶然で、ロッシーが仕事で遠くの町に出掛けた帰りに体調を崩し、町のはずれで身動きが取れなくなっていた所にスージーが通り掛かり、彼を介抱したことがきっかけだったという。



「それが不思議な話でな。
スージーはいつもその時間はこの先の雑貨屋で働いてるんだ。
それが、店主の都合でたまたまその日は早くに店じまいしたそうで、普通だったらそんな時はすぐに家に帰るのに、その日はなぜだか散歩して帰ろうと思ったらしいんだ。
しかも、わざわざ家とは反対の方角にだぜ。
こういうのが運命っていうんだろうなぁ…
俺には神様が二人を引き合わせたとしか思えないんだ。」

「だろうな。
きっとそうなんだろうな!」

「あんたもそう思うか?
いや〜、嬉しいよ!
運命とか神様なんて言うと笑う奴もいるからな。
あんたと出会えたのも、神様のおかげなのかもしれないな!」

その言葉に、ジュリアンは複雑な笑顔を浮かべた。


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