「そういう人達はけっこうたくさんいるの?」

「いえ…そういう者は重宝される反面、その力を恐れる者達も多いため、よく殺害されるのです。
ですから、魔女だということを公にしている者はごく僅かです。
カードには特別なものが宿っているとも言われております。
ディオニシス様、これは魔女のカードなのですか?」

「そうじゃないよ。これはそんなカードじゃない。」

ラビスの顔に浮かんだ畏れの色を感じ、ディオニシスは彼を安心させるため、嘘を吐いた。



「ほら、ごらん。
だから、このカードには何も描かれてないんだ。」

そう言って、ディオニシスは真っ黒な表をラビスの前に広げて見せた。



「そうでしたか…
では、これは何のカードなのですか?」

「うん…それはまだ思い出せないんだけどね…」

答えながら、ディオニシスの頭にはまた新たな疑問が浮上する。



(あの老人は確かこれを僕のカードだって言ってたな。
じゃあ、他の者が引いても絵柄は浮かび上がらないんだろうか?
それとも…)



ディオニシスは慣れた手付きでカードを念入りにシャッフルし、それをテーブルの上に広げると、ラビスにその中から一枚のカードを選ばせた。



「ディオニシス様、これでよろしいですか?」

ラビスの選んだカードを受け取り、ディオニシスは自分の手前に裏を向けたままそっと置いた。



「ありがとう。
じゃあ、僕はもう休むから、君も早くに休んでおくれ。」

ラビスが部屋を出たのを確認すると、ディオニシスはラビスの選んだカードを表に返す。



(こ、これは……!)



そこには、すでに絵柄が浮かび上がっていた。
にこやかに微笑む男性の絵柄だったが、その背中には鋭く光る短刀を隠し持っている。
それが良くない出来事を意味するカードだということをディオニシスは一目で感じ取った。



(なんてことだ…!
僕は、誰か…思いもよらない人物に殺されてしまうっていうのか!?)

ディオニシスは震える手でカードを持ち、にこやかに微笑む男性の絵柄をじっとみつめた。


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