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「な、なんだと!
そ、それで、マウリッツはどうなったのだ!?
ディオニシスは…」

セルギオス王の前で、リガスは俯き小さく首を振る。



「何もわかりません。
ただ…クレタスが何者かに殺されたのは…おそらく、赤い雲の出現を私に知られたくない者の仕業かと思われます。」

「誰なんだ、それは…」

リガスは俯いたまま、唇を噛みしめた。



「どうした、リガス…」

「大変申し上げにくいのですが……」

「ま、まさか…ネストルだというのか!?」

セルギオスの言葉にリガスは小さく頷いた。



「そんな…まさか……」

「セルギオス様…
クレタスは、テノスから言いつかった通りに、赤い雲の確認をしておりました。
赤い雲が何であるか、なぜ、それを確認せねばならないのかは、テノスにも申しておりませんゆえ、クレタスがその事情を知る由はありません。
クレタスがどのような人間であるか、残念ながら私は知りませんが、魔導師達は、自分達の任務についてはそれほど口は軽くないはずです。
おそらく…クレタスは、頂上でネストル様にお会いしたのではないでしょうか?
頂上へ足を踏み入れることが出来るのは、ごく限られた者だけです。
結界周辺の見回りの者とネストル様くらいのもの…
そこで、ネストル様になぜこんな所へ来ているかを訊ねられ、クレタスはありのままを答えたはずです。
私の用事で、赤い雲が出現していないかを確認しに来ていると。
ネストル様は聡明なお方です。
それが、なにか重要な使命だということに気付かれたはず。
ネストル様は、赤い雲が現れたら、私ではなくご自分に伝えるように言われたのではないでしょうか?」

セルギオスは、リガスの推測に頭を抱え、うなだれた。



「……おそらくおまえの言う通りだろう。
そう考えれば、この度のことはすべて合点がいく……」

セルギオスは、独り言のように小さな声で呟いた。



「しかし、なぜだ!?
ネストルは、何のためにそんなことを…!?
魔導師の命を奪ってまで、赤い雲のことを隠したかったのはなぜなのだ!?」

「考えられるのは、ネストル様は赤い雲がマウリッツ様のご帰還の合図だと推測なさったからではないでしょうか?
その場に、ディオニシス様がいらっしゃったかどうかはわかりませんが、ネストル様は、どうしてもお二人に戻ってほしくはなかった…」

「そ、そんな…
ディオニシスとネストルは従妹同士なのだぞ。
幼い頃から、まるで兄弟のようにして育った。
むろん、私も、今まであいつのことを我が子同様に感じていた。
ディオニシスよりも優秀で逞しいあいつのことを、羨ましくも感じていたし、信頼もしていた…なのに、なぜそんな……」

セルギオスは拳を固く握りしめ、悔しそうに何度も頭を振った。


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