「あら……」

リアナは、ダニエル達を見て、驚いたような表情を浮かべた。



「ちょ、ちょっと、忘れ物があって……」

「そ、そうなんですか。」

「リアナ…帰って来て早々にすまないが、お茶の用意をしてくれるか?」

「はい、わかりました。」

リアナはいやな顔ひとつせず、買って来た荷物を持って台所へ向かった。



「それはそうと、リアナをいつまでここで働かせるつもりなんだ?
キーファがすごく心配してたぜ。」

ロダンは、マウリッツの問いかけにただ穏やかに微笑むだけだった。







「アレクの奴…ずいぶんと遅いな。」

すぐにでも戻って来るだろうと思われたアレクは、夕食の時間を過ぎても戻っては来なかった。



「あ…あの…マウリッツ…」

「なんだ?」

「赤い雲のことは、君達しか知らないことなの?」

「あぁ、そうだ。
もちろん、リガスさんとセルギオス王も知ってるけど、おそらくこの四人しか知らないと思う。」

「……そう。」

ダニエルは言葉少なにそう答えると、そのまま深く俯いた。



「赤い雲のことがどうかしたのか?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど…」

歯切れの悪い返事をするダニエルを、ウォルトはじっとみつめた。



「ディオニシス様…もしや、赤い雲がみつかったのは偶然のことではなく、ロージックの者達は赤い雲のことを最初から知っていたと…そうお考えなのですか?」

「え…!?あ…う、うん。
確証があるわけじゃないけど、なんかふとそんな気がして…」

「どういうことなんだ!?」

ウォルトは唇を噛みしめ、何かをじっと考えていた。



「……確かに。
その可能性はないとは言えない。
なにしろ、ディオニシス様をロージックに送ったのはネストル様です。
つまり、ネストル様はロージックの何者かと通じている…」

「おいおい、だから、それはどういうことなんだよ。」

「リガス様はお忙しい方だ。
だから、毎日、赤い雲の出現を調べているのはリガス様にお仕えする魔導師のはず。
もしも、その魔導師がなんらかのことから、ネストル様に与しているとしたら…
赤い雲が我々の帰る印だということがネストル様に漏れていても不思議はない。
そうなれば、ネストル様がロージックの者に、赤い雲が現れたらそこにいた者を捕えるように指示するのは当然のこと…」

「な、なんだって!?
それじゃあ、俺達は罠に落ちたようなもんだっていうのか!?」

マウリッツの言葉に、ウォルトは深く頷いた。


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