(あぁ、信じられない!
やっとリンガーに戻れるなんて……
これも、マウリッツやウォルト、それにスピロスさんやアレクさんやロダンさん、アドニアさん…みんなのお蔭だね…)



ロージックに戻るための準備がすべて整い、ダニエルは興奮で眠れない夜を過ごしていた。
瀕死の状態でアドニアの店に運ばれた時から用までのことを、ダニエルはゆっくりと回想する。
本当の敵がマウリッツではないとわかったこと…
そのマウリッツが危険を冒し、自分を探しに来てくれたこと…
ラーフィンでの穏やかな日々……



(リンガーは、今、どうなってるんだろう?
もしかして、僕はもう死んだと思われて、ネストルが王位を継いでる…?
いや、セルギオス王がそんなに簡単に諦めるはずはない。
きっと、僕が戻ることを信じて下さってるはずだ。
戻ったら、ネストルの悪事を明らかにして…そして、僕はリンガーの王子としてあの国と国民をしっかりと守っていこう!)



リンガーにいた頃にはあまり感じたことがなかった王子としての自覚が芽生えたことに、ダニエル本人もどこか戸惑いを感じながらも、それと同時に誇らしさのようなものも感じていた。
様々な想いがダニエルの胸に去来して、ダニエルはなかなか寝付けなかった。



(あ、そうだ…!)



ダニエルはベッドから起き上がり、片時も離したことのないカードを取り出した。



(……大丈夫だよね?
もうここまで準備が出来てるんだ。
明日の朝、アレクさんがスピロスさんと一緒にここに来て、ウォルトと一緒に僕達をトラニキアの山頂に運んでくれる。
そこで、ウォルトが赤い狼煙をあげて…そしたら、リガスさんっていう魔導士がすぐに山頂に来るから、リガスさんとウォルトとアレクさんとで結界を破って……
うん、問題はない。
シールドの効果はわからないけど、あれだけロダンさんが自信を持って作ってくれたものだもの。
間違いはないだろう。
万一、効果が薄かったとしても、スピロスさんがいるんだ。
大丈夫…何も心配はない。)



ダニエルはカードを裏に向け、テーブルに広げると、それを両手で念入りにシャッフルし、その中から一枚を選び出した。
いつもの同じく、真っ黒な面に少しずつおぼろげな絵柄が浮かび上がる……



(こ、これは……!)



そこに浮かび上がったのは、木の葉に隠された鋭い刃のついた罠だった。
木影には、男が不敵な笑みを浮かべている。



(ま、まさか…!
明日、なにかが起こるっていうのか?
僕らの仲間の中に、裏切者がいるっていうのか…!?)



思いがけない暗示に、カードを持つダニエルの手が、小刻みに震えた。



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