(愚か者めが!)



ネストルは眉をひそめ、手にした手紙をぐしゃりと握りつぶした。


あれ以来、なにかというとリガスがネストルの外出に付き添った。
そんなリガスの目をかいくぐり、ネストルはロージックの者と連絡を取り続けた。
しかし、そこに書かれていたものは、ネストルをただ苛立たせるだけの報告だった。



(なぜ、自らの手で止めを刺さなかった!?
なぜ、身元も不確かなトレジャーハンターに、そんな大切なことを頼んだ!馬鹿者め!)



本来ならば、次の日には心臓にナイフを刺し込まれたディオニシスの遺体が広場に転がされるはずだった。
しかし、その遺体が姿を消したという。
結界をくぐった後のディオニシスは瀕死の状態で、とても生きてはいないだろうということだった。
ロージックの魔導師達は、ディオニシスの始末を依頼したトレジャーハンターが、どこかに遺体を放置して逃げたのではないかと推測しているようだった。



(そんなはずがない。
そいつらには入山証と金をやると約束したと言っていた。
普通なら、それに目が眩み、頼まれたことをちゃんとやり遂げるはずだ。)



ロージックとリンガーでは多くの点で相違点があることを、ネストルもまだ理解していなかった。



(しかし、そうしなかったというのは一体どういうことなのだ?
遺体を運ぶ途中で何事かのアクシデントでもあったのか?)



そのことについてずっと考え続けていたネストルは、数日後、あることに思い当たった。



(そうか…わかった!
トレジャーハンターは、ディオニシスの身に付けていた宝石の値打ちに気付いたのだ!
だから、それを取り、遺体はどこかに捨て去ったのだろう…
なんということだ!!)



ネストルは、込み上げる憤りに、壁に向かって激しく拳で殴りつけた。



それからさらに数日後、ネストルはロージックの者達に新たな指示を出した。
それは、高価な宝石を売りに出した者がいないか調べよという指示だった。


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