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「……リアナさんは、お兄さんのことをとても想ってるんですね。」
「そうなんだ。
ここに来るまでも、あの娘は休むことなく情報集めに奔走してたよ。
とにかく必死なんだ。」
「血は繋がってないとはいえ、キーファさんはリアナさんにとってたった一人のご家族ですからね。」
スピロスのその一言で、部屋の中はしんみりとした雰囲気に包まれた。
「……スピロス、俺、仲間の所に行ってロダンのことを聞いてくるよ。」
「えっ!?今からですか?」
「あぁ、今夜のうちに調べておけば、明日すぐにとりかかれるからな。」
「でも……」
スピロスが声をかけようとした時には、アレクの姿はその場から消え去っていた。
「……行ってしまいましたね。
戻ったばかりでアレクも疲れているでしょうに…」
たった今までアレクが寝そべっていた長椅子を見て、スピロスは苦笑いを浮かべる。
「すみません。
なんだか僕だけ何も出来なくて…」
「何を言ってるんです。
君は、まだ身体が本調子ではないのですから、そんなことを気にすることはありませんよ。
元気になったら君にも出来ることはあるはずですから、今はそのことだけを考えましょう。」
スピロスはそう言って、ダニエルの肩に手を置いた。
「ありがとうございます、スピロスさん。
お蔭様でずいぶんマシにはなって来ました。
元通りに動けるようになるのもそう遠い日ではないと思ってます。
それで…さっきのロダンって魔導師さんなんですが…その人は、どういう人なんですか?
伝説の人っていうのは一体…」
「ダニエル……ロダンは、大変優秀な魔導師なのですが、その中でも護符を作ることにかけては最高の腕を持つとされた魔導師で……
そういえば、君は護符のことを知っていますか?」
「はい。
一度だけ見たことがあります。
トラキニアに入る時に、そこの結界を通る護符というものを首から下げるように言われました。」
「極めて初歩的な護符ですね。
リンガーでは、護符は誰でももらえるものなんですか?」
「いえ…トラキニアに入れるのは、探険隊の隊員と様々な厳しい審査を通ったごく一部のトレジャーハンターだけです。」
「では、君はトレジャーハンター……いえ、そんなはずはないですよね?」
スピロスがダニエルの様子をうかがうようにじっとみつめる。
「え…?
……いえ、そういうわけでは……」
答えに詰まったダニエルは、言葉を濁し俯いた。
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