7
どれほど歩いただろうか。
見覚えのある児童公園の中に、美紗が求めていた人間を捜し当てた。
彼は古びたベンチに座り、ぼんやりと空を眺めている。
美紗は躊躇いつつも、公園の中へと足を踏み入れる。
青年は公園には入らず、その場に立っていた。
美紗と彼の距離はゆっくりと、だが確実に縮まってゆく。
期待と不安、各々の感情を抱きつつ、美紗は彼の前へと辿り着いた。
「――和仁(かずひと)」
美紗は彼の名を呼ぶ。
彼――和仁は空を眺める事だけに集中していたようで、美紗の出現には相当驚いていた。
「美紗……」
和仁の口から紡がれる美紗の名前。
改めて呼ばれるのは、随分と久しい気がする。
「隣、いいかな?」
「え、ああ」
和仁の了承を得て、美紗は隣に腰かける。
だが、座ったはいいものの、どう切り出して良いものかが分からない。
突然訊くのもどうかと思う。
だからと言って、黙っていたままでは、ただ時間ばかりが過ぎてゆくばかりである。
- 78 -
しおりを挟む
[*前] | [次#]
gratitudeトップ
章トップ