7
――少しの間だけでもいい。どうか、彼女の心を救ってくれないか……
見えない天の川に、僕は強く願った。
彼女の幸せは、僕の幸せ。
彼女の哀しみもまた、僕の哀しみなのだ。
――僕はただ、彼女の笑顔が見たいだけだ……
そう思った、まさにその時だった。
わずかではあったが、空を覆っていた暗雲が、風に押し退けられるように移動した。
星が、見えた。
幼い頃から彼女と共に見ていた天の川が、僕の想いに応えるように顔を覗かせたのだった。
「嘘……」
咄嗟に呟いたのは、彼女の方だった。
僕と同様、今日は天の川どころか、小粒の星さえ見られないだろうと思っていたのだろう。
「今日って、予報は雨だったはず……よね……?」
僕に改めて確認する彼女。
僕は「ああ、確かに……」と答えた。
「これから雨が降るはずだったけど……」
「じゃあ……予報は外れ……?」
「そういう事になるだろうな」
そんな会話が交わされた後、僕と彼女は、再び口を閉ざした。
真剣な眼差しで天の川を見つめ、ここぞとばかりに願い事を託した。
いい年をして――と笑われるかも知れない。
だが、今の僕には関係ない。
笑われようが、コケにされようが、何よりも、彼女の幸せを願いたかった。
ふと、彼女を見ると、彼女もまた、瞳を閉じながら胸の前で手を合わせ、何かを祈っている。
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