「ねえ……淋しくないの?」
「サミシイ……?」
 少年は怪訝そうに首を捻った。
 ジュンは続けた。
「だって、誰だって一人は孤独だと感じるものでしょう。私だってそう。
 確かに、一人の方が気楽だと思うけど……やっぱり、誰も側にいないのは……堪えられないから……」
 その時だった。
 突然、ジュンの瞳から雫がぽとりと落ちてきた。
「何で、あなたが泣くの……?」
 少年の手が、今度はジュンの顔へと伸びる。
 そして、泉のように溢れ出る涙を、手の平でそっと拭った。
「ありがとう……」
 ジュンは少年の手を握り返し、身体ごと、自分の元へと引き寄せた。
 少年は自分を『亡霊』と言っていたが、ほんのりと温もりを感じる。
 規則正しく鳴る心臓も、ジュンのそれと何ら変わりはない。
(でも、私には彼を救う術がない。それどころか、自分を殺そうとしていたのだから……)
 自分の考えていた事の愚かさを、改めて認識した。
 何故、少年がここに存在するかは分からない。
 しかし、これはほんの憶測だが、もしかしたら、彼もまたジュンと同様、生きる事を諦めた結果、この世界へ飛ばされてしまったに違いない。
 消えたい。
 だが、死ぬだけの度胸はない。
 ただ、現実世界から消え去ってしまえればそれで良い。
 卑劣な苛め、理解のない両親や教師から解放されたい。
 ジュンはずっと願っていたのだ。


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