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「死神……。何を絵空事みたいな……」
馬鹿馬鹿しい。
そう思いつつ、だが、身体は震えていた。
「大丈夫?」
少年は表情一つ変えず、ジュンに触れてくる。
「何だ。『消えたい』と思っている割りには、死ぬのが怖いんだね」
「――ねえ……」
深く息を吸い込み、ジュンは訊ねた。
「本当に……死神はいるの……?」
「もちろん。普段は人に見えないだけで、死神はどこにでも存在する。
そして、死期が近くなった人間の側には、常に付き纏っているよ。死んだら、魂をすぐに狩れるようにね」
話を聞いているうちに、淡々と語る少年の方が、まるで死神のようだとジュンは思った。
「――君は……死神なの……?」
また、訊いてしまった。
少年は微苦笑を浮かべ、首を横に振った。
「僕は違うよ。確かに人間ではないけど、死神でもない。
死ぬ事も生きる事も出来ない亡霊――と言った方が正しいかな」
「じゃあ、元は人間だったの?」
「そういう事になるかもね」
「――憶えていないの……?」
「そうみたいだね」
自分の事なのに、まるで人事だ。
ジュンの質問に答えている時も、哀しげな表情は全く見せない。
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