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「――考えてみると」
木を見つめたまま、彼は呟いた。
「この木は、ずっと俺達を見守っていたんだよな。
雨の日も、風の日も、雪の日も……何も言わず、ただ、じっと耐えながら……」
「――うん。そうだね……」
私は彼の言葉に頷き、そっと幹に触れた。
ごつごつしているのに、どこか優しい感触。
心の中が、温かくなってゆく。
「ルカ」
彼が、私の名を呼ぶ。
同時に、突然、私は彼の中にすっぽりと包まれていた。
一瞬、何が起きたのか理解が出来なかった。
彼に抱き締められた状態のまま、息を飲む。
「気付いてた?俺はあの頃からルカが好きだった。ルカとこうしていられる事を、ずっと、願い続けていたんだよ……。
ルカは俺の事、どう想っている……?」
「ど、どうって……」
突然が重なり過ぎて、私の頭は混乱していた。
心臓の鼓動も、自分のものとは思えぬほど速く打ち続けている。
彼の事は好きだ。
だが、それが恋なのかどうか、私にはまだ理解が出来ない。
いや。今までずっと、彼を『手のかかる同い年の弟』としか見ていなかったというのが、正直な気持ちだった。
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