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と、その時だった。
「おいおい。こんな所で寝ていたら風邪ひくぞ」
深い眠りに入ろうとしていたのに、耳障りな男物の声で、見事に邪魔をされた。
私は再び瞳を開け、仰向けのまま、その人物を睨む。
「――ちょっと、邪魔しないでくれる?せっかく人が気持ち良く眠ろうとしていたのに……」
「何だよ、その言い方。こっちこそ、せっかく心配して言ってやったってのに……」
私の言葉に、彼は不満げに口を尖らせる。
ちょっと言っただけで不貞腐れる彼を見て、私は小さく溜め息を吐く。
四月から高三になるというのに、この辺は全く進歩がない。
成長しているのは身体だけ。
中身はまだまだ子供だ。
「なあ。ルカ」
彼は私の横に座ると、真っ直ぐな瞳で見下ろしてきた。
「せっかく天気が良いんだから、どっか行こうぜ。家にいたって、どうせやる事ないんだしさ」
「面倒臭い」
私はきっぱりと返した。
「私は今日一日、家でゴロゴロするって決めてたの。
そんなに暇ならは、他の友達でも誘って遊んだら?」
「――何だよ、それ……」
私の答えが相当不満だったようだ。
先ほどに増して、表情が更に不機嫌になっている。
――しょうがないなあ……
私はのそっと起き上がった。
「で、どこに行きたいの?」
「えっ!付き合ってくれるの?」
「――言い出しっぺはあんたでしょうが……。まあ、行きたくないなら無理には……」
「行くに決まってんだろ!」
私が言いかけた言葉を、彼は咄嗟に遮った。
「よし!それじゃあルカ、俺に着いて来い!」
彼の態度は、呆れるほどがらりと変わってしまった。
未だ、ぼんやりしている私の手首を半ば強引に掴むと、そのまま外まで引っ張り出された。
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