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「美澪……なのか……?」
容浚は訊ねた。
しかし、少女はゆっくりと横に首を振る。
「残念だけど……私はあなたの求める“美澪”ではないわ。――美澪は、この場所で十年前に亡くなったのだから……。
私は……美澪が憑依した者、とでも言った方がいいかしら。
美澪は、肉体を失ってからもずっと、あなたを待ち望んでいたのよ。この地に縛られ続けている彼女は、あなたに逢いたくとも逢いに行けないから……」
「――そうか……」
普段なら笑い飛ばしてしまいそうな絵空事も、今だけはすんなりと受け止めていた。
逢いたかった――
それは、容浚も同じ事だったのだから。
「――一つ、教えてもらえないか?」
彼は少女から身体を離し、真っ直ぐに見つめた。
「何かしら?」
「美澪は……俺と出逢えた事を、幸せだと想っていてくれたのだろうか……?」
容浚の言葉に、少女は考えるような仕草を見せ、それからはっきりと口にした。
「もちろんよ。美澪は最高に幸せだったわよ。
そうそう。こうも言っているわね」
少女は一呼吸置くと、今度はにっこりと微笑を浮かべた。
「またいつか、生まれ変わる事が出来るのなら、次は平和な世の中で、平和な一生をあなたと送りたい……」
the end
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