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少女はすでに完結を迎えているのだろうか。
何にも揺るがない姿勢は、かつてのままのようにも思えるけれど。
僅かに逡巡した後、己の口端からこぼれおちたのは、兄の名前だった。
「………クレイを…頼む」
「あら、連れていけば?」
「………兄さんは、………ここにいるほうが、いい」
呆れたような声に、クスクスと鈴を転がす様な声で答える、少女。
「新世界の、アベルとカイン。………この世界は、いつだって生まれ変わる。この一秒の間にだって、もう同じ世界ではいられない。…そして、創世するのは、いつだって人」
「…ミアリ?」
「……無数に生まれゆく世界で、星を掴むのは、きっととても難しいことよ」
「…?」
「リュー。これをあげる」
そうして、少女が握りしめていた拳を、ストールの影から差し出す。
そっと掌を開けば、そこには。
少女が作ったらしい、淡い青色のビーズで出来たブレスレットがあった。
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