7
「亜梨花」
俺は右手を亜梨花の背中から解き、それで彼女の髪を撫でた。
「遠距離恋愛、耐えられるか?」
俺の問いに、亜梨花は「もちろんよ」と自信ありげに答えた。
「これまでだって、ずーっと片想いしてたんだからね。そんなの、今までに比べたらどうって事ないわよ!」
「そっか」
亜梨花は強い。
俺は改めて思った。
「あ、そうだ」
俺はふと、今夜の事を想い出した。
「今夜、花火があるってお袋が言ってたな」
「うん。あるね」
亜梨花は頷いた後、「一緒に行く?」と訊ねてきた。
「まあ……お袋にも、亜梨花ちゃんを誘いなさい、って言われてたしな」
「小母さんに言われたから一緒に行ってくれるの?」
「んなわけねえだろ」
「貴之の意思?」
「何度も言わせんな」
俺が言うと、亜梨花は再びケラケラと笑い出した。
――何が面白いんだか……
俺は呆れる半面、亜梨花が楽しそうに笑う姿に幸せを感じていた。
そんな亜梨花を見つめながら、これから先は花のような笑顔を壊さぬようにずっと大切にしてゆこう、と改めて心に誓った。
【君という花・了】
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