ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
魔法使いの沼地31






「ねぇ、ラルフ……本当にひき返す気はないの?」

野原の片隅に寝転んだリオは半身を起こし、ラルフに向かって問いかけた。



「また、それか……おまえも本当におかしなことを言う奴だなぁ…
そもそも、魔法使いを探しに行こうって言い出したのはおまえの方だろ。」

ラルフは身体を丸め、目を瞑ったまま、面倒臭そうにそう答える。



「それはそうなんだけど…
あの時は、なんだかわからないけど、とにかくものすごくそんな風に思ったんだよ…
でも、冷静に考えてみると、そんなどこにいるのか見当もつかないような魔法使いを探すなんて無理なんじゃない?
……だったら、あの沼地で待ってた方がずっと……」

「あぁぁぁ、もう良いっ!
さっきから、何度そんなこと言ってるんだ。
そろそろ暗くなって来た。
町の方に行ってみても大丈夫なんじゃないか!?」

そう言うと、ラルフは両手を伸ばし、尻を高く上げて伸びをする。



「何度も起こされたから、寝不足だ…」

ラルフは不機嫌な顔をして、さっさと歩き始めた。



「あ、待ってよ!」

リオは起きあがり、バッグに停まっていたレヴィを肩に乗せ、慌ててラルフの後に続いた。









「あれがレヴィの歌のせいだったって気付いたのはずいぶん経ってからのことだった…」

「おまえは本当に抜けてるよな。
俺は言った筈だぜ。
そいつが人間の感情に働きかける歌を歌えるってこと。」

「うん、ただ、それはなんていうか…
感動的な歌っていうことかと思ってたんだ。
まさか、あの時、あんなに強く魔法使いを探しに行こうと思ったのが自分の意志じゃなかったなんて考えてもみなかった。」

「馬鹿。あれはおまえの意志さ。
レヴィの歌はその背中をちょっと押してくれただけのことだ。
まぁ、確かに俺にも詳しいことはわからない。
だけど、俺に食べ物をくれる人間は、レヴィが歌うととっても元気になったり、涙を流したりしてたからな。
きっと、なんらかの特別な力があるんじゃないかと思ってたんだ。
でも、その人間の意志を操れるようなもんじゃあないぞ。
意志はあくまでもその人間が決めたものだ。
本人がそのことに気付こうが気付くまいがな…」

「……確かにそうかもしれないね。
僕はあの時とても混乱してたから…
自分の本当の気持ちさえもよくわからなくなってたのかもしれない。
それをレヴィが教えてくれたんだね…」

リオの青い瞳が宙をさ迷い、その当時に想いを馳せる。


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