ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
魔法使いの沼地30


しばらくすると、ラルフが戻った。



「今日はチキンを持って来てくれたよ。」

ラルフは、そう言いながら、前足で気持ち良さそうに顔を洗う。



「チ…チキンって…」

リオは、ちらりとレヴィの方を見やったが、当のレヴィはそんなことは少しも意に介してはいなかった。



「大丈夫だって。
こいつは、人間の言葉はわからないんだ。」

「そ…そうなの…」

「ところで、おまえは何か食べたのか?」

「いや、僕は……」

「そうか……食べたくないなら食べなきゃ良い。
腹が減りゃあ、食べれば良いさ。」

「……そうだね。」

「人間って奴は、どうも余計なことを考え過ぎだ。
時には、俺達を見習って、自然に過ごした方が良い場合もあるってことさ。」

ラルフはそう言って大きな口を開けて欠伸をし、その場に丸くなる。



(そうだね……
君の言う通りかもしれないね…
自然のままに流されて、ありのままを受け入れて…
それが一番なのかもしれないね…)

ラルフのなめらかな毛並みをなでながら、リオは心の中で呟いた。







「ねぇ、ラルフ…
君はどうしてこの沼地を出ないの?」

昼近くになって、ようやく目を覚ましたラルフにリオが尋ねる。



「どうしてって…
そうだな、まぁ、第一にはここにいたらこいつが安全だからだ。
ここには天敵がいないからな。
第二に、これと言って行きたい場所がない。」

「……そっか……」

「……おまえ、魔法使いを探しに行きたいのか?」

「えっ!?い…いや、別にそういうわけじゃ…」

リオは慌てて首を振る。



「そりゃあ、そのままじゃ厄介だよな。
ここで魔法使いを待つっていうのも出来ないことはないが、いつどこに現れるかはわからないから、ここにいたって会えるかどうかはわからない。
かといって、探しに行っても会えるってわけじゃないよな。
だけど……」

不意にラルフの言葉が途切れた。



「だけど、何?」

「……いや、ここにずっといるよりは旅に出た方が楽しいだろうと思ってな。
おまえが一緒にいてくれるんなら、こいつもめったなことにはならないだろうし……」

「そ、それじゃあ、僕と一緒に来てくれるの!?」

「俺は別に構わないけどな……」

その時、レヴィが歌を歌い始めた。
それは、心の躍るようなどこか不思議な歌声だった。



「ラルフ!レヴィ、一緒に行こう!
外の世界はきっと楽しいものに満ち溢れているよ!」

自分の口をついて出た言葉に、リオ自身、少し驚きながらも、その心は希望と期待に膨らんでいた。


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