ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
魔法使いの沼地22


(神父様、申し訳ありません。
僕はやっぱりあの場所へ行くしかありません!)



リオは、神父の言葉に従わず、再び、あの沼地を目指した。
無駄なことかもしれない…
神父の言った通り、あの場所には魔法使い等いないかもしれないということはリオにも十分わかっていた。
しかし、呪いを解く手掛かりが得られるとしたら…それは、やはりあの沼地以外にはないようにリオには思えたのだ。



教会を離れて数日後…リオは、魔法使いの沼地に着いた。



(マリアン…)

空に浮かんだ丸い月を見ていると、マリアンの最期の時の様子が、つい昨日のことのようにリオの心に思い出された。
やせ細った身体で熱にうなされながら、自分の膝の上で息耐えた哀れな妹…
綺麗な服を着ることもなく、ただ生きる為だけに懸命に働き、そして病に倒れ、恋をすることもなくまだ18という若さで逝ってしまった可愛い妹…



(僕のせいだ……
僕に力がないばっかりに……!)

暗い沼地を歩きながら、リオは、深い沼の底に沈む自分の姿を思い描く。
思いきってこの沼の中に身を沈めてしまえば、すべての悩みから解放される…
寂しさも悲しさも人から恐れられることも、すべてが終わる…



(苦しいのはほんの少しの間だ。
マリアンの苦しみに比べたら、比べ物にならない程の…)

リオの頬を一筋の涙が伝った。



魔法使いのことも、呪いのことも、いつの間にかリオの頭の中から消え去っていた。
沼の縁にランプを置き、ゆっくりとリオは沼の中に足を踏み入れた。
足にまとわりつくような水の流れに抗いながら、リオは一歩、また一歩と沼の中央に向かって歩いて行く。



(マリアン…借金のこと、ごめんな。)

リオの脳裏に、子供の頃からのマリアンの顔が次々と思い浮かんでは消えていく。
笑った顔、怒った顔…苦しみに歪んだ顔…そして、最期に見せた満ち足りたあの穏やかな顔が…



「マリアンーーーー!」

リオの涙混じりの絶叫は、広い沼地の静寂に掻き消える。



「おいおい、おまえ、そんな所でなにやってるんだ?」

「えっ!?」

不意に耳に届いた声に、リオはあたりを見まわすが声の主はみつからない。



「ここだよ。ランプの横。」

言われた通りにランプを見ると、その横にキラリと光る丸い目とぼんやりとなにやら白っぽいものがあるのがリオの目に映った。


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