ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
26


「主様…これは?」

『翔よ、おまえはこれから先の人生をどちらの世界で暮らすかを決めねばならぬ。』

「は、はい。」

やっぱり思っていた通りだ。
だけど、この短刀は?
そして、母さんと朱花はなぜあんな所に…?



『良いか、翔……
もしも、おまえがこの先、人間の世界で暮らしたいと思うなら、朱花を…
竜の国で暮らしたいと思うなら、おまえの母親の心臓を刺すのだ、その短刀でな。』

「ええっっ!」

僕は思わず短刀を放り投げていた。



『短刀を拾え…』

「だ、だって…」

『拾うのだ!』

鼓動は速くなり、僕は泣きそうになりながら短刀を拾った。
短刀を持つ手が震えて、また落としてしまいそうだ。



『きっちりと未練を断ち切るため、これはどうしてもやらなければならないことなのだ。
良いか、もう一度言うぞ。
もしも、おまえがこの先、人間の世界で暮らしたいと思うなら、朱花の心臓を…
竜の国で暮らしたいと思うなら、おまえの母親の心臓を刺すのだ。
よ〜く考え、明日の日の出までに決めるのだ。
この道は一度踏み出すと、もう後へは戻れぬ。
どちらに踏み出すかは、一度きり。
やり直しは出来ぬ。
どちらか一方を決めない場合は、おまえもろとも、この二人も消滅する。』



「あ…主様!!」



勝手なことを言って、主様は姿を消した。



僕はその場にうずくまり、大きな声をあげて泣いた。
こんなこと…決められるはずがない!
母さんも朱花も僕にとってはどちらもかけがえのない人達だ。
いや、大切な人じゃなくたって、僕に人殺しなんて出来るはずがない。



「母さん!目を覚まして!
ここから逃げるんだ!」

「朱花、起きろ!!
早く逃げるんだ!!」

声を限りに叫んでも、二人は術にでもかけられてるのか、全く起きる気配はない。



どうすれば良いんだ…



僕は、どうすれば……






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