ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
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「翔…起きろ。」

「う、ううん…誰…?」

「桂葛だ。
さぁ、行くぞ。」

「桂葛さん…?」



頭ががんがんした。
僕はお酒を飲んでいつの間にか眠ってしまっていたようだ。
桂葛さんに連れられて行った先には、主様がいた。



「翔…おまえの気持ちに正直にな…」

「あ、はい。」

桂葛さんの言葉の意味はわからなかったけど、きっと、これからなにか重大なことが起きるんだってことは僕にもよくわかった。



『翔…ひさしぶりだな。』

「お、お久しぶりです、主様。」

『ここでの暮らしはどうであった?』

「は、はい、楽しかったです。」

まだ頭がはっきりしなくて、僕はそんな子供みたいな答えをしていた。



『さて、今宵はおまえの今後を決める大切な日だ。
翔よ…おまえにとって人間の世界で一番大切な者は誰だ?』

「それは…それは僕の両親です。」

『二人はだめだ。
どちらか一人を選ぶのだ。』

酷く難しい選択だ。
とても選べないと思ったけど、その時に僕が生まれた時のことの話を思い出した。
僕が死んでしまったことで、生きる気力をなくして、後を追おうと思ったって言うあの話だ。
それを思うと、強いて選ぶとしたら母さんの方かなって思えた。



「……母さんです。」

『そうか、よくわかった。
ならば、こちらの竜の世界ではどうだ?
ここで一番大切な者は誰だ?』

「そ、それは……」

僕の心に迷いはなかった。
ただ、それを素直に言って良いのかどうか少し迷ったけど、そこでさっきの桂葛さんの言葉を思い出した。



『どうした?』

「……朱花です。」

『朱花か…よくわかった。』



すると突然、僕の目の前に二本の道が現れた。
その道は、うすくぼんやりと光ってる。



「あっっ!」



道の先の片方には母さんが、その反対側には朱花がいた。
二人とも立ってはいるけど、眠ってるのか目を閉じている。



「ぬ、主様!こ、これは……!」



その時、見知らぬ中年の男性が入って来て、木の台のようなものに載せられたものを僕の前に差し出した。



「これは?」

「お取り下さい。」

男性はそうとだけ言った。
それは、僕には不似合いな鋭い短刀だった。



「さぁ、早く…!」

男性に強い口調でそう言われて、僕は仕方なくその短刀を手に取った。


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