ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
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「翔……
正直に言ってほしい。
本当に私のことが好きか?」

僕達は並んで丘に腰掛け、沈みゆく夕日をみつめていた。



「もう何度も言ったじゃないか。
僕は、朱花のことが好きだ。
真剣に愛してる。」

「……では、なぜ、私と契りを交わしてはくれないんだ?」

「それは……」



僕が竜の世界に来て、そろそろ五年になろうとしたある日、朱花からそんなことを言われた。
契りを交わすっていうのは、つまりは結婚の約束みたいなことらしい。
僕だって出来ることなら朱花と結婚したい。
だけど、以前、桂葛さんにも言われてるように、この先のことはまだなにがどうなるかわからない。
とにかく五年が過ぎるまでは、いくら僕が朱花と結婚したいといったところで、それを許してはもらえないと思う。
だけど、そんな事情は話せないし、一体、どういえば良いんだろう?



「……それは、翔には里に許嫁がいるからだ。」

急に響いた声に、僕らは同時に振り返った。



「桂葛さん!」

「里に許嫁が……」

桂葛さん……突然、何を言い出すんだ。
僕はびっくりして、何も言うことが出来なかった。



「それじゃあ、なぜ私を……」

「それは、その許嫁が親の決めた相手だからだ。
親のいうことには従うのが子というものだ。
しかし、もちろんそれを断り、たとえば、もう里には戻らずにここで暮らすという選択もあるにはある。
どちらにするかは、もうじき決まる。
翔のここでの療養は五年と決められているのでな。
もう少しすれば、翔はその答えを出すだろう。」

朱花は僕をじっとみつめていた。
桂葛さんの話を聞いていて、僕ははっきりとわかった。
きっと、もうじきこのままここにいるか、元の世界に戻るのかが決まるんだ。
ただ、それを僕が決めるのか、主様や竜神様が決められるのかはわからないけど……



「それは、いつ決まるんだ?」

「次の満月の晩だ。」

「じゃあ、あと何日もないじゃないか。」

「その通りだ。」

もうそろそろだとは思ってたけど、そんなにすぐだとは思っていなかった。
あと数日で、なにかが変わるんだと思うと、身体が震えるような想いだった。



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